地中海石喰人魚


その三

 先ほど石を引っ掻きだした場所のさらに先へと移動をすると、人魚は無造作に石を拾い上げ、二つに割ってひとつを私に差し出した。さすがに私も慣れて来て、ためらい無く口に放り込む。残りを人魚が喰べるのを見つめながら、自分もゆっくり噛みしめた。
 口の中に広がる泡。そして、
「あ」
 今度はなんだろう。なんだかとても退屈した感じ。面白くないと思う毎日。同じことの繰り返し。だけどなにかを気にしているみたい。なんだろ。なにを気にしているの? 後もう少しで分かりそうなんだけど、えーっと、ただ気になるのは、

 ただ気になるのは今日の髪型と、いつもの仲間との世間話。

 すとんと、突然のように理解できてしまった。この人の気持ち、私、分かることができる。
『……だけど、毎日繰り返してしまうのは、それを止めても他にすることが無いから。この毎日にうんざりして嫌っているくせに、私にはこの毎日を変える気力も無いんだわ。そして死ぬまで繰り返すのよ、この退屈な毎日を』
 声、だ。声がする。
 人魚の言葉の泡とはちょっと違う、もっと、私の感情に直接触れてくるような、心の声。
「それは市民の中でも金持ちな家の奥様ね。多分ここは婦人用の寝室よ」
「婦人用の寝室……?」
 ぼんやりと、人魚の言葉を繰り返す。まだ気持ちが今の石に飲み込まれたまんまだ。すいぶんと気だるい感覚が残っているけれど、でも人魚の言った意味を考えることはできる。
 私が今かじった石には、金持ちの奥様の気持ちが染み込んでいた。人魚はここを婦人用の寝室という。
「つまりね、ここの石はここに住んでいた人たちの感情でできているの。人が感じる喜怒哀楽を少しずつ少しずつ吸収して、そして静かに海で眠る。それを喰べるのが、私たち人魚。分かった?」
「うーん。なんとなく」
「じゃあ、もう一個あげる」
 そう言葉の泡を吐き出して、人魚はさらにまた一つ石をくれた。
「今度のは、その奥様がいつも使っていた作業部屋の土台」
 彼女の言葉を飲み込んで、それから石をかじってみる。そして体中に染み込む感情の泡。
 まず最初に分かったのは、今の女性と同じような倦怠感。だけど、ちょっと違う。どうも今の人とは別人みたい。うんと、これは、
『ああ、嫌だ。毎日毎日、なんだってこんな奥様の相手をしなくちゃいけないんだろう。使用人を指図して、奥様には愛想笑いして。話すことといえば今日の髪型か誰かの噂話。でも、毎日繰り返すんだわ。この退屈な人生を死ぬまで一生!』
 こぽ。
 私は大きくため息をつくと、ゆっくりと首を振った。
 これでさっきの人魚の言葉も理解できた。
 初めて渡された石は世にも稀なる幸福な一家のもので、今のは暇をもてあました金持ち奥さんの家の石なんだ。
 けど、分かったところで楽しくないよ。さっきのお父さんに比べたら慣れてきたせいか感情が読みやすくなってきているけど、その分気持ちが落ち込んでくる。
「どうだった?」
 そんな私に気が付かず、人魚が無邪気に問いかける。
 どう答えたらよいのか分からず、私はとりあえず黙って肩をすくめて見せた。
「あら? もしかして、負の感情のほうが分かりやすかった?」
 私の表情に何かを感じたらしい。今までのやわらかい笑顔を真剣な顔つきに変えて、人魚はじっと私を見つめた。
「今、あんまり良い精神状態ではないのね」
「……うん」
 今まですっかり忘れていた苳太の顔を思い出し、つい視線を下に落としてしまう。人魚はそんな私にあえて問いかけるようなことはせず、黙って石の欠片を差し出した。
「これは?」
 いつの間に拾ったんだろう。
「口直しよ。かまないでね、しゃぶるだけでいいわ。それ口に入れたら他の場所に行きましょう。ここにはあまり良い石は揃っていないの。もともと比較するために来ただけだしね」
 出された石を素直にほおばり、ゆっくりと泳ぎだす。

 静かに染みわたる泡の粒。
 街の、大通り沿いのどこかの柱の石なのかな。漫然とした空気。個人の感情までは分からない。ただ、人がいる。たくさんの人。泣いたり笑ったり、集中するとかすかに浮かび上がるたくさんの感情。

 こぽ。

 泳ぎながら、私は泡をひとつ吐き出した。
 私と、苳太のこと。いつか時がたてば、こんなふうに街の空気のひとかけらになってしまうのかな。私が三十八度五分の熱を出しながら落ち込んでいることを苳太は知らないまま、このまま二人の仲は終わっていき、そしていつか懐かしい思い出に変わってゆく。
 紀元前から続く人の歴史を考えれば、私と苳太なんて、この口に含んだ石の欠片のさらに一角にしか過ぎないのかもしれない。それこそ壁や柱に染み込んで、ちゃんと識別できるほどの感情があるようなものではなく、人魚の口にすら入らずに、自然に朽ち果てていくような。
 ううん、石どころじゃない。苳太本人ですら、いつか私のことを忘れて別の人と一緒になるんだ。
 ごぼ。
 しだいに釈然としない気持ちが高まってきて、まるでサイダーを一気飲みしたような、そんな喉のつまりを覚えた。
 苳太。
 苳太は本当に私を忘れるのかな。いや、あの別れ際のあの冷たい目、あんな表情見たことなかったんだもの。もうすっかり私との仲は終わったつもりで、銀行の窓口嬢と楽しく合コンしているのかも知れない。愛想の良い例の牧羊犬の微笑みを、私じゃない別の女の子に見せて。
 ……。
 なんか、だんだんむかむかしてきた。
 胸焼けとか空気の取り込みすぎだとか、そんな気道の上のほうの話なんかじゃなく、もっと下の腹のほう。
 だんだんむかっ腹が立ってきた。
 多分、いい加減うじうじ悩んでいる自分にも苛付いてきたんだと思う。なんだかこんな滅多に来られない場所に来て、ひたすら苳太とのことで落ち込んでいるのが嫌というのか悔しくなった。
 だってここは夢の中で、地中海で、ついでに人魚がいるのよ。なんで楽しまないのよ、自分?
 自棄と言われればそれまでだけれど、とにかく何か行動を起こしたかった。ただおとなしく人魚の後についていき、言われるとおりに何かをするのではなく、もっと積極的な行動。
 だってここは私の夢の中なんだから。もっと前向きに、自発的に動かなくちゃ。
 うんと勢いよくうなずくと、その拍子に口の中の小さな欠片が粉々に砕けて消えた。そうよ、石!
 ふと思いついて泳ぐのをやめると、海底に横たわる朽ち果てた遺跡の中から手ごろな石を拾ってみる。
 一番最初に説明されたとき、人魚は自分でも好きな石を拾って喰べていいって言っていた。それなのに結局気を使ってもらって、人魚に良い石を選んでもらおうとしている。そんなんじゃ駄目なんだ。せっかくの夢の中なんだもの。自分で選んだ石を喰べなくては。
 みかんくらいの大きさの、白くてごつごつとしている石に、私は大きくかじりついた。石は人魚が選んだ他の石と変わりなく、口の中で崩れるとあっという間に小さな空気の粒に変わり、私の中に染み込んでゆく。
 さあ、今度はどんな石だろう。
 気負いがある分、期待も高まる。なんだかわくわくしながら意識を集中させると、しだいに自分の中から声が聞こえてきた。
『……ッケ、……いで。メートリッケ』
 かすかに聞こえるその声にはっとする。
 やさしい、女の人の声。その声があまりにもやさしく、思いやりに満ちているので、私はなんだか胸騒ぎがした。
『女神様、アフロディテ様!』
 次の瞬間、悲鳴のような声が自分の体を貫いた。
『お願いですっ。あの人を取り戻して! 彼がもうここには来ないって、別の人と結婚するって、そんなの私信じない。だって、来年は春のお祭り一緒に行こうねって約束していたのに!』
 言葉だけではない、激しい感情も私の中に渦巻いてゆく。
 困惑、怒り、悲しみ、すべてが一緒くたになった感情の渦。
 うわ、これはちょっと……。この展開は、まずい気がする。
 とはいえ自分ではどうすることも出来ずに、私はただ自分の中の声に耳を傾けるだけだ。
『私たち、まだ一緒に冬を越したことないんです。お祭りも、二人が出会ったあの時以来行っていない。それなのに、あんなに約束を大切にする人だったのに、私を置いて行ってしまうなんて、そんなの嘘よ』
 そんな言葉とともに、私の目の前にゆっくりと影が浮かび上がった。
 二つ分の白い影。
 それは海の中でゆらゆらと揺れながら、しだいにはっきりとした輪郭になる。そのままじっと見つめると、輪郭はさらにピントが合うように明確になり、じきに大理石で出来た像と、その足元にひざまずく女性へと変わっていった。
 あ、この人がメートリッケだ。
 最初に聞こえた声を思い出し、私は理解した。せっかく結い上げた髪の毛がほつれてぐしゃぐしゃになっており、顔も泣き過ぎたせいか腫れぼったい。周りの見えなくなった切羽詰った表情。そんな彼女を見ているだけで、私の胃はぎゅっと痛んだ。
 なんか、駄目だ。こういうのって。興味本位でながめるには、あまりにも彼女の感情がこちらに直接伝わりすぎる。
『お祭り。そう、あのお祭りのとき、私たちを引き合わせてくれたのはギュッリスなのに、何で彼女もアレクシオスは去ってしまったと私に言うの? アレクシオスは富を得るため私じゃなくてあの女を選んだんだって、なんて酷い噂! 信じない、信じない、信じない!』
 そこまでを早口で一気に言うと、メートリッケは突然ぴたりと口を閉ざし、ただひたすら自分のてのひらを見つめだした。まるで自分の手が何か他のとんでもないものに変わってしまったかのように、目線を固定し動かない。
 ……この人は、知っている。
 彼女から放射されるどうしようもない絶望感を感じ取り、悟ってしまった。
 アレクシオスが他の女性を自分の意思で選んだのかは分からない。でも、彼がもう二度と彼女の元には戻らないことを知っている。
 そのうち彼女はゆっくりと手を閉じて、そしてその手は指が白くなるほどきつく握り締められた。
『ギュッリス。……あんな人、冥府にでも行ってしまえばいい。あんな嘘を私に教えようとする人。かわりにアレクシオスを、私の恋人を連れてきて!』
 蒼ざめた顔をゆがませて、突然彼女は叫びだした。よろめくように立ち上がると、女神像にとりすがる。
『アレクシオス!』
 彼女の悲鳴に私は思わず耳をふさぐ。
『愛しているの。この前わざと素っ気なくしたのは、寂しかったからなの。あんな別れのままで二度と会えなくなるなんて、そんなの信じない! お願い、アフロディテ様。もう一度だけでよいから、あの人に会わせて……』
 石像の足元に崩れ倒れ、細かく肩を震わせて彼女が泣く。
 私はそんな彼女を見つめながら、ただぼんやりと海中に浮いているしかすべがなかった。

 どつぼに、はまった。

 いまだ泣き続ける彼女の映像を目の前に、心の中でつぶやく私。今、自分の中で、前向きな姿勢というのががらがらと音を立てて崩れてゆくのが良く分かる。
 なんだってよりによって、こんな石を選んじゃったんだろう。
 これが石が見せる幻だとしても、はるか何千年も昔の出来事だとしても、でも、今私の目の前でメートリッケという女性が泣いている。自分の相手が去ってしまい、泣いている。そんな彼女を見て、平気でいられるはずなんてないよ。
 偶然手に取った遺跡の石。なのになんで私はこの女性を選んでしまったんだろう。こんな、今の自分ではとうてい受け止めきれないような人の悲しみを、私は見たいと思わなかった。それなのに、なんで。
「残りの石は、どうしたの?」
「……知らない」
 無意識のうちに泡をひとつ飲み込んだらしい。いつの間にやってきた人魚の問いかけに素っ気なく答えると、私はなおもメートリッケを見つめていた。
「石、捨てたの?」
「え?」
 幻を見ているせいか、人魚の姿は見えずに泡だけが私の口に飛び込んでくる。
 それにしても石、石って、さすがに石喰人魚だけにやけに石にこだわっているなぁ。
 メートリッケの世界にどっぷりとはまり込んでしまった私には、そんな人魚の問いかけが少しばかり鬱陶しく感じられた。
「石って、どの石のこと?」
「あなたが喰べた、石の残り」
「石の、残り?」
 そのとき初めて自分が喰べた石の残りを手にしていないことに、気が付いた。
「あれ? そういえばどうしたろ?」
「もしかして、落としてしまった?」
「……さあ?」
 曖昧な笑みを浮かべて首をかしげてみせる。こうしている間にも、メートリッケの悲しみは続いていた。人魚には悪いけれど、今の私には石の残りと彼女の悲しみときたら、後者のほうが気になることなんだ。
 彼女、わざと素っ気なくしたのって言っていた。あんな別れ方って言っていた。ケンカ、していたのかな。でも、春のお祭りは一緒に行くって楽しみにしていたのに。そう思っていたのに、それなのにアレクシオスは、
「わぁーっ!!」
 いきなり目の前に人魚の顔のアップが飛び込んで、その途端、頭の中で叫び声が大音量で鳴り響いた。
「えっ?」
 人魚の口から私の口へと勢い良く泡は吐き出され、心構えの出来ていない私は思わずむせてしまう。
 ごぼっ。ごぼぼぼぼぼ。
 体中の酸素が一気に抜ける。
 石っ! 石はどこっ?
 溺れる恐怖に我を忘れて手足をばたつかせていると、人魚がすぐに石を私の口に押し込んだ。
「な、な」
「どう? 少しは酔いもさめたんじゃない?」
「何がっ?」
 もう少しで溺れ死ぬところだったじゃない!
 と怒ろうとしたけれど、人魚の上目遣いでにやりと笑うその顔に黙り込んでしまった。
「感情を持った石は、同じ感情を持った人に敏感なの。石を選ぶときはもっと慎重にしないと、すぐにつかまって悪酔いするわよ。ちょうど今のあなたみたいにね」
「それを先に言ってくれれば」
「そうね」
 人魚の微笑がふんわりと優しいものに変わったので、私はようやく冷静になることが出来た。
 あー、もしかして私、かなり失礼な態度取ってませんでしたか? きちんと質問に答えようとしなくて、おざなりな返事でやり過ごして。
「……ごめんなさい」
 いくら石の感情に酔っていたとはいえ、私の態度は良くなかった。ここは素直に反省。そして聞かれたことにはきちんと答えるのが正しい態度だと思う。けど、
「残りの石の行方だっけ?」
「そう。どこかしら? 捨てたのだったら別に良いんだけれど。失くしてしまった?」
「え、えーっと、捨てたわけではないんだけれど」
 私はすぐに言葉に詰まってしまい、困り果てて何も持っていない空っぽの手を見つめた。
 さっきまであんなにメートリッケにのめりこんでいたから、喰べかけの石なんてどこに行ったかおぼえていない。ただひたすら幻を見ていたわけだし、ということはそんなに動き回っていたわけではないんだから、多分、
「海底。かな?」
 びくついた愛想笑いをして、とりあえず人魚のご機嫌を伺ってみた。
 なんで彼女がそんなに喰べかけの石にこだわるのか分からないので、私が誠意を込めて出来ることといったら、これくらいだ。
 こぽ。
 人魚はそんな私を見て、小さなため息の泡をひとつ吐き出した。
「あ、あのー、何か意味があるの? その石って。」
 恐る恐る聞いてみる。
「ええ。あるわ。」
 人魚は私を怒るわけでもなく、どちらかといえば哀れむような目で見つめてからうなずいた。
「あなたはここの世界とは違うところから来たお客様だから知らないのも仕方ないけれど、ここにもここの法則というものが存在するの」
「法則?」
「そう法則。理、といってもいいけれど。この世界のものすべては存在理由があって、何一つどうでも良いものなんてない、という法則」
「あの、ってことは?」
「つまり、いつの間にか失くしちゃった、とか、どっかいっちゃった。とかいうことは許されないのよ。あなたが石を無くしたときは、それはあなたか私が石を喰べ終えたとき。もしくは捨てようと思って捨てたとき。それ以外の、例えば悪酔いしているときにどうやら海底に落としちゃったみたい、なんていうのは駄目。厳しいかもしれないけれど、それを守らないとこの世界が崩れてしまうの」
 なんとなく、嫌な予感がした。
「じゃ、じゃあ、どうすればいいの?」
 すがるような目で人魚を見つめる私。けれども彼女はそんな私の目線を微妙にはずしながら、まるで励ますように軽くぽんぽんと肩をたたく。
「……海底に行ってね、失くした石を取ってきてほしいの」
「は?」
 ぼこ。
 彼女の言った意味が分からずに、私は思わず聞き返してしまった。
 自分が失くした石を探しに、海底に行く?海底?
 視線をゆっくり下に向ける。数メートルほど下がったところに崩れ落ちた廃墟の床が広がり、濃い緑色をした海草がゆっくり揺れていた。白い砂。ごつごつとした岩。そして朽ち果てた石畳。
「海底って、あのー、そこに見える、あれですか?」
「そう。そこに見えるあれ」
 一瞬の沈黙。そして、
「ちょっと待ってよ。本気でこの下? そんな、こんな石ころだらけの海の底で私が失くした石なんて、見つかるわけ無いじゃない。冗談きついって、人魚ったらもう!」
 無理やり笑い話に持っていこうとして、私は明るく笑い飛ばしてみた。が、人魚の態度は変わらない。
「残念ながら冗談じゃないのよ。本当に見つけなくちゃ、いけないの」
 ぴたりと私の笑いは止んだ。
「本気で、言ってる?」
「本気も本気」
「もし見つからなかったら、どうなっちゃうの?」
「見つからなかったら? 答えは簡単。あなたがただ、帰れなくなるだけ。ずっとこうして私たちと一緒にいるの」
 二度目の沈黙。私は無意識のうちに生唾を飲み込んだ。
「……他の石と間違えないでその石を見つけることなんて、そんなことできるわけ無いじゃないの」
 冷静に考えてみようよ。ね?
 そんな気持ちを込めて人魚に言ってみたけれど、彼女はさっくりと言い返した。
「区別なんて、もともとあなたが拾ってきた石なんだから、あなたしか出来る人はいないのよ。よく似た石を探して、そしてちょっとかじってみる。それがもしあなたが悪酔いした石ならば、その時あなたは自分の世界に帰れるわ」
「そんな……」
 小さくつぶやくと、私はがっくりと肩を落とした。
 B級ホラーな夢から抜け出したと思ったのに、こっちのほうがよっぽどたちが悪い。
「やっぱりこっちも悪夢だったんじゃないのーっ」
 ごぼごぼごぼーっ!
 叫んだところでもはや後の祭りだった。