遠い記憶

2.草原の章


その5

 みんなの後を付いてゆき、社務所ゲルからほど近いゲルの一つに向かっていった。
 入り口の手前、空に向かって両手を広げ、何かを唱えているジハンがいる。足元には落ち着き無くうろつきまわる羊の姿。隣に立つ女性に見覚えがあった。宴会で馬乳酒を注いでくれた、あれがジハンの奥さん、エルデなんだろう。彼女は桶からひしゃくで牛乳をすくうと、同じように何かを唱えながら半分ほどを羊の頭にそっとこぼしていた。
「あれは?」
 容易には立ち入れない、厳かな雰囲気を感じてたずねる。
「ことほぎを与えているの。家畜は感謝を込め、祝福をしてから屠殺する。それ以外の、例えば病死とか他の獣にやられたとかで死んだ肉は、口にしてはならないから」
 美幸の説明にあらためて目の前の光景を見つめる。エルデはひしゃくに残った牛乳を、大きく弧を描くように大地に振りまいていた。切れ目無く続く、抑揚の付いた祝福の言葉。二人の声はぴたりと合わさり、歌をうたっているようにも聞こえる。

 屠殺という言葉を知っていても、それがどんなものだかなんて具体的に分かっているわけでもない。私の日常に出てくるお肉はみんなスーパーのショーケースの中、トレイに敷かれスライスされた精肉だ。
 ただ言葉から、そしてその結果から、何か荒々しい血や暴力に繋がる行為のように漠然とイメージしていた。それなのに青空の下、ジハンとエルデは祈りをささげている。厳かな雰囲気が漂っていた。
 ジハンは祈りを終えると、ごく自然な動作で羊をひっくり返した。片足で羊の両後脚を押さえつけ、左手で前脚を持ち上げる。いつの間に手に持っていた小刀で羊の胸をすっと切ると、それを脇に置いて手を羊の胸に差し入れた。その瞬間、大人しくされるがままだった羊が、びくりと体を震わせる。そしてその後には徐々にぐったりとして、静かに事切れていった。
「中の血管を切って、出血死させる。血はお腹の中に留まるから、大地を汚さない。うまいやり方だよね」
「凄い……」
 あまりの手際の良さに、呆然とつぶやいてしまう。
 ジハンはたった今自分が屠った羊の前にひざまずくと、また何か祈りをささげ始めた。自分達が生きるために、家畜を屠る。例え必要なことであっても、他の命を奪うその行為には許しが必要なんだろう。彼らの態度は、あくまでも謙虚だ。
 二人の姿に見入っていると、横からホンジ達が羊に近寄っていった。贖罪の祈りを彼女達も捧げている。美幸に促されるまま私も近付くと、繰り返される言葉を真似して口にした。

「ああ、二人とも」
 祈りが終わって顔を上げると、にっこりと笑ったジハンが私と美幸を見つめていた。
「お早うございます。よく眠れましたか」
 見慣れたいつもの笑顔。穏やかな表情。
 羊の屠殺は彼らにとって、大切だけれど日常の仕事の一つなんだ。なんだかすとんと納得した。
「久しぶりにベッドで寝たから、気持ちよく眠れたよ」
 すぐ足元に羊が横たわっているけれど、私も普通の口調で言葉を返す。
「それは良かった。明日出発すれば、また旅暮らしになります。今のうちに体は休めておいた方が良いですから」
「そうだね」
 うなずきながら、これから小刀を研ごうとするジハンの動きを目で追っていた。当たり前のようにエルデが砥石と手桶の水を持って来て、ジハンの横に置く。その自然な一連の動作に、二人の付き合いの長さがうかがえた。
「ジハン、その横の人って」
 遠慮しながら話を振ると、ジハンがああと小さくつぶやいて彼女を引き寄せた。
「私の妻、エルデです。そしてあちらにいるのが私の子供、シャラウ」
「子供っ?」
 予想外の紹介に、慌てて指差された方を見る。ナランの二人の子供と犬のチャイグと一緒に遊ぶ、男の子がそこにいた。
「シャラウは五歳なの。今年の大祭で、草競馬初デビューの予定」
 美幸の解説に、ただはぁと答えるしかなかった。あんなに大きな子供がいるんだもん、エルデとの息もぴたりと合う訳だよね。
「えっと、シャラウに兄弟とかは?」
 今までの自分の生活の中で、小さい子ってあんまり見る機会が無かった。でもここの世界では、色んな世代が一緒くただ。赤ん坊がいて、子供がいて、大人がいて、老人がいる。シャラウがオユナの一つ上なら、ジハン夫婦にニャムヤムと同じ年くらいの子がもう一人いてもおかしくないんじゃないかな。
 けれどこの質問をした途端に美幸の体がぴくりと動き、何か空気が張り詰めるのを感じた。
「兄弟は、いました。弟が一人」
 ジハンの目がすっと細まって、淡々と報告される。
「去年の冬に生まれた子でしたが、大災の寒波に負け、年を越すことが出来ずに風の精にさらわれました」
「風の精?」
 とっさに聞き返した瞬間、はっとする。なんで小さな子は仮の名前でしか呼ばれないのか、その理由を思い出したんだ。
 早くに死んでしまうと恐れられているからだって、風の精に名前を覚えられて、さらわれてしまうって、そういう説明だった。だとしたら、その言葉の意味するところは……。
「ごめん、なさい」
 なんと言って良いか分からず、謝りの言葉を口にする。ジハンはそんな私を逆に気遣うように、ゆっくりと首を振った。
「去年の寒波は激しかった。私達の子供だけではない。人も家畜も多くが大災にやられました。そう、私達だけではない」
 ジハンの言葉は私にではなく彼自身に向けられていて、掛ける言葉が見つからなかった。ジハンとその隣で寄り添うエルデを、私はただ見つめるだけだ。
 二人の手はぎゅっと握られていて、お互いを支えあっていた。ジハンはエルデの耳元で、小さく何かをつぶやく。二人の間にしか通じないそれを受け、エルデがこくりとうなずく。と、ジハンはふいに私に視線を戻した。
「相次ぐ大災で、ここでの祭りも年々集まる人数が減っています。次の大災を防ぐためにも、雨乞いの祈りを成功させなくては」
「大災を、防ぐ?」
 引き締まったジハンの表情。とても大切な事を言われているのだろうけれど、よく理解できずに聞き返してしまう。
「草原は、これから乾季に入ります。さらに暑くなり、乾燥する。その前に大地は一度湿らせて、草木に水分を溜め込ませなければならない。そうしなければ夏の乾季を乗り越えることが出来ずに、植物は育ちきる前に枯れ果ててしまう」
「そのための、雨乞いだったんだ」
 今更ながら、お祭りの本来の目的を思い出した。お祭りって部分だけでただ単純に、華やかで賑やかな集まりとしか考えていなかった。
「旱魃の影響は夏だけではありません。冬の飼料も、秋までに収穫した干草でまかなっていますから」
「って言うことは、ここで雨が降らなかったら、翌年まで持ちこたえられないってこと?」
「そうですね。それでも、冬の寒さがそれほどでなければ生き延びることは出来ますが、寒波が来ればさらに条件は厳しくなります」
 ジハンは言葉を切ると、ぐるりと辺りを見回した。つられて私もこの風景を眺める。
 草原は朝露が乾いたばかりで、空気にもまだ湿度を感じていた。これから日差しは急激に強くなるけれど、からりとした晴天は心地良い。
「夏の旱魃と冬の寒波。この二つに襲われると、大災となります。今年大災が来るかどうか。それは雨乞いの祭りで、雨を呼び込むことが出来るかどうかにかかっています」
「大切な、大事な儀式だ」
「私達、草原の民にとっては」
 言いながらジハンは私を真っ直ぐに見つめ、黙り込んだ。いつもののんびりとした笑顔とは違う、鋭い目付き。それは昨夜見たシャラブの表情によく似ていた。
 そんなジハンから目を反らすことも出来ずに、しばらくじっと見つめ返す。すると彼はゆっくりと視線を外し、子供達を手招きした。
「シャラウ! オユナ! ニャムヤム!」
 呼ばれて子供達は無邪気に駆け寄る。
 チャイグまでやってきて、犬の吠え声や子供達の歓声で一気に騒がしくなった。その中からジハンは年少のニャムヤムを抱きかかえると、空へと高く掲げる。きゃっきゃっと笑うニャムヤムの笑い声が響いた。
「私達の子供は一人失いましたが、ナランの子は生きている。私はこの子達や家畜、ケレイトの民を守っていかなくてはいけません。ケレイト族の一員として、また、次代の長として」
 彼のそう言い切る姿に圧倒され、ただ黙ってこの光景を見つめていた。
 明るい空の下、子供達を相手に微笑むジハンはシャラブのような威厳があって、この地をまとめる次代の長にふさわしい。そう心から思った。
「雨乞いの祭りはケレイトの民の仕事だけれど、さらにその根本、この世に満ちる気を安定させるのは玉の造り手の仕事だよ」
「美幸」
 今までずっと黙っていた美幸が、ふいに口を開いた。
「気そのものが乱れていれば、それを操って雨を呼ぶことも難しくなる。寒波にだって立て続けに襲われる」
「そうか」
 短くうなずくと、私はまた黙り込んだ。
 アクタが次代の長の座をあっさりと捨て、玉の造り手になろうとしたと聞いた時、ただ周りを振り回しているだけのように感じていた。でも違うんだ。この地でケレイトの長として一生を全うするのも、玉を造り鎮めるためにキョエンへ向かったのも、同じこと。どちらもこの世界の人々を守りたかったから。
 シャラブもジハンも、そして私を迎え入れてくれたここの人達もみんな、それを分かっていた。だからアクタの事を微笑みながら語って聞かせてくれたんだ。だから、
「拓也だって、分かっているはず」
「何を?」
「私が、アクタが玉の造り手になる事を選んだ理由」
「まあね」
 あっさりと返事をすると、美幸は肩をすくめた。ジハンもなぜか美幸と見合わせ、いつもの表情に戻っている。
「分かっていても、色々と追いつかないことが多いんでしょ。主に感情面に関してだけど」
「まあ、仕方ないですよ」
 何を言いたいのだか分からないあやふやな言葉を手繰り、二人はなぜかうなずいていた。
「ごめん、よく意味が分からないんだけど」
「当人同士の問題は、当人同士で解決しろってことよ」
 美幸が言い切ったところで、エルデが何かを話しかけてきた。すっかり忘れてしまっていた羊と、その横に置かれた小刀と砥石を指差している。
「あっ、羊!」
 こちらに関しては何を言いたいのかすぐ分かり、慌てて小さく叫んでしまった。
「この後どうするの?」
「皮を剥いでから、関節ごとに解体していきます。エルデ達が腸詰を作りますから、その手伝いをしてもらいますか」
「はーい」
 返事をして、エルデを見た。にこっと笑った表情がジハンに似ている。他人だからもちろん顔つきじゃなくて、なんだろう、共有している何かが同じって感じ。きっと良い夫婦なんだろうなって、結婚したことないくせに妙に納得してしてしまった。

 腸詰を作ると聞いて想像していたのは腸詰肉、ソーセージだったんだけど、詰めたのは肉ではなくて血だった。昨日の宴会で出たのもこれだったけれど、結局手をつけなかったので差が良く分かっていなかった。
 羊のお腹の中、溜まった血はゆるいゼリーのように凝固する。おかげで血は大地にこぼれることなく鍋に移すことが出来るんだ。それに細かく刻んだ脂身だとかそば粉とかを入れ、腸に詰めて茹で上げて、出来上がる。この作業だけを見るとなかなかにグロい感じだけれど、事前の儀式とか今までの流れから、家で夕飯作っているのと同じだなって素直に思えた。さすがに素人なんで間違えて腸を破るとまずいということで、私と美幸は水汲み要員だったけれど。

 そんなことであっという間にお昼になり、早速解体した羊をみんなでつまんだ。もちろん食べきれるような量ではないし、元からこれは今日の宴会のためのもの。
 残りを社務所ゲルに献上すると、着替えを始める。いよいよこれから夕方にかけて、雨乞いの儀式が始まるんだ。

 ジハンと別れ、女の子同士になって昨日と同じように飾り付けると、私達はハダクの丘に向かった。夏の日差しをさえぎるよう、頭からベールを被る。こんな気候で長袖というのも一見暑そうだけれど、直射日光を浴びない分、半袖よりも過ごしやすかった。何よりここは日本と違って湿気がない。ゆるやかに吹く風が、体にこもる熱を逃がしてくれる。
 人々に声を掛けられながら歩いていると、昨夜は暗くて見えなかった井戸が、なだらかな丘のてっぺんに見えた。そこに向かってゆっくりと進んでゆく。道行く人達が手に持つのは色とりどりの布。後は時々、家畜を連れている人もいる。
 井戸に近付くにつれ、この布を何に使うかが分かってきた。水を汲むために取り付けられたやぐらには、無数の布が巻きつけられ、風にはためいている。人々は布をやぐらに巻きつけると、井戸からくみ上げた水を互いの頭に数滴振りかけていた。布は鮮やかな色彩のものもあれば、色あせてぼろぼろになっているものもある。やぐらはまるで、長年おみくじをくくりつられている御神木のようだ。
 井戸の水で互いにことほぎを与え合うと、人々の流れは左手、少し下がった位置にある広場へと移っていった。これから始まる雨乞いの儀式を見守る場所だ。けれど私達はここで広場には向かわず、列から逸れる。井戸のすぐ右横には数人しか入れないようなテントが張ってあり、その手前にお祭りの主催者と思わしき人達が集まっていた。お客様はそちらへどうぞ、ということみたい。そこですでに到着しているヒコと拓也と合流した。
「ヒコ、二日酔いは?」
 なんとなく拓也と向き合うことが出来ずに、挨拶代わりにヒコに声を掛ける。そういえば、彼とは昨日の宴会からあまり話していなかった。
「そんなのすっかり治っているよ。今日も朝から牛と馬の世話とか、馬車の修理に追われていたし」
 結局は酔いつぶれてしまったとはいえ、宴会でのヒコはいつもよりも落ち着いた雰囲気で、はじめて見る人のようだった。旅を共にしている仲間の藤崎晴彦ではなくて、私の記憶に無いオロム・アルスンがいるって感じ。でもそれはヒコだけじゃない、拓也や美幸にもいえた。今のヒコはやっぱりどこかよそゆき顔だけれど、昨日に比べればずいぶんと馴染みやすくなっている。オロムからオーロくらいにはくだけているというか。私が、前世の顔を見せる彼らに慣れてきたからなのかな。
「そっちは何していたんだ?」
「羊の解体。腸詰作りに挑戦してたよ」
「え? 作ったんだ」
 すっと、ごく自然に拓也が会話に参加してきた。
「作った、とは言えないけれど……。手伝いで水汲みしたりとか」
「水汲みか。それ、確かに作ったとはいえないよな」
「本当にただの手伝いだ」
 そういって二人に笑われる。拓也の態度は普段と変わりなく、昨夜のことなんか微塵も感じさせない。
 昨夜のこと、無かったことにしたいのかな。
 いつもの笑顔を目の前にして、私の心が鈍く痛む。
 アクタへの罪悪感や後悔をすべて一人で背負い込んで、弱いところをこれ以上見せないようにして、私をアクタではない成田真子として接しようと努力して。
「なんで拓也は」
「え?」
 どう口にしたら良いのか分からずに中途半端に話し掛け、聞き返されて黙り込む。何を言いたいかなんて、自分にだって分からない。上手く言えたとしても、結局は昨夜の蒸し返しにしかならないような気もするし。ただもどかしい思いが募っているだけだ。
 困って視線を彷徨わせると、その時周りからわあっという歓声があがった。
「儀式が始まる」
 美幸にうながされ、内心ほっとしながらテントの方を振り返る。ちょうどそこから人が現れたところだった。
 
 特別な衣装らしきものをまとった人物と、その後ろで太鼓を抱えているジハン。ジハンの格好は昨日と同じ正装だったけれど、前を歩く人物の姿は何か異形のもののようだった。金糸銀糸で刺繍が施された布地に、沢山の細切りの布が縫い付けられている着物。ただの日よけと違い、顔をすっぽりと覆う薄布のベール。でもその背格好には、見覚えがあった。
「あれは、シャラブ?」
 確認するように美幸に尋ねると、うなずかれた。
「ケレイト族の長が舞を奉納し、気を高め、井戸の奥底に眠る龍を呼び起こすの。目覚めた龍は天へと上り、雨雲を呼び寄せてこの地に雨を降らす」
「龍!」
 驚いて小さく叫ぶと、ヒコににやりと笑われた。
「期待させて悪いけれど、実体はないからな。水の性質を持った気の塊が、そう見えるって話」
「あー、そうなんだ」
 自分には見えないものの話と知って、露骨にがっかりしてしまった。まあ確かにここって自分とは違う世界なんだけど、今まで見てきた生き物はすべて私の知っているものばかりだし。突然伝説上の生き物が現れても、違和感はあるんだけれど。
 それでも未練たらしく井戸を眺めていたら、すぐ近くでシャンという鐘の音が聞えた。見回すと、テント近くに居座る人達のかなりが、鐘や太鼓を手にしている。ジハンだけではない、ここにいる人達も打楽器を使い演奏をするようだった。
「打楽器だけなの? 他の楽器は?」
 昨日の宴会で見た弦楽器がないのを不思議に思い、ヒコに聞いてみた。
「使わない。雷を呼び込むために、鐘と太鼓だけで奏でるんだ」
 確かに雷のゴロゴロいう音は打楽器っぽくて、弦では出せそうにない。納得をして、井戸の傍で居住まいを正すシャラブとジハンに視線を戻す。けれどすぐに何か違和感が起こって、空を見上げた。
 いつものように雲ひとつない夏の空。踊りで雨雲を呼び寄せるというのが信じられないほど、晴れ渡っている。
 けれど、なんだろう。
 何も見えないはずなのに、上空の大気が渦を巻いているように感じられた。ちょうど台風のときの、雲の動きを見ているみたいだ。映像を早回しして流れを見ているかのように、ものすごい勢いで風がうねり荒れている。
「分かる?」
 耳元で声が聞こえたので振り向いたら、拓也が同じように空を見上げていた。
「う、ん。……変な、感じがする。妙にざわついているみたいな」
「気が安定していないんだ。祭りで集まる人の熱気にあてられて、バランスが崩れてきている」
 その説明に驚いて、彼の顔をまじまじと見つめてしまった。だってそれって、まずい状態だよね。
「シャラブは知っているの?」
「術士だからね。分かっているよ。けど」
 そこで拓也は言葉を切ると、空をにらみ険しい表情になった。
「俺達も、覚悟をしておかないと」
 その言葉を待っていたかのように、ジハンの太鼓が大きく一つ鳴り響く。
 それが雨乞いの儀式の始まりだった。