遠い記憶 番外編

夢の話 / 後編


「まだー?」
 私の先を進んでいる拓也に向かって、声をかける。
 見渡す限りの大草原。前方の遥か彼方に、オボ山が他の山々と共に姿を現している。あの聖なる山のふもとに旅の目的地、交易都市ホータンウイリクがあるんだ。けれど今は馬に乗って進んでいる私達以外に、誰一人として存在しない。ちょっと強めの風が吹いたので、私は慌てて被っていたベールを引き上げた。
 一口に草原と言っても、全てが青々とした草に覆われているわけではない。ここ数日は乾燥した地域にいるらしく、むき出しの地表が広がっている場所もあり、風が吹けば砂埃が舞った。荷台に積んだ水も、そろそろ心許ない。集落には井戸があるか、調べておくのも重要な仕事だ。
「もう少ししたら見えてくるはずだよ。方向はこっちで合っているから」
 遠くを見つめるようにしていた拓也が、ようやくこちらを振り返る。拓也もジハンと同じように術を使い、風を読み、この先を見つめていた。
「水、あるといいね」
「大丈夫じゃないかな。去年と違って、今年は旱魃が起きたって話は聞かないから」
 そう言いながら、拓也が空と大地をすっと眺める。多分、水脈が途絶えていないか見ているんだろう。私自身は相変わらず不思議な力に目覚める気配も無いのだけれど、こういった何気ない仕草にも意図が隠されていることは、さすがに分かるようになっていた。
「これから行く集落って、どんな感じのところなの?」
 自分の乗っている馬、マゴクの歩を少し進めて拓也と並ぶと、そう聞いてみる。
「どんな感じって、普通の村だよ。大災で捨てられたくらいだから、荒れてはいると思うけれど」
「じゃあ、庭とかある?」
「庭?」
 訳が分からないといった表情で、拓也が聞き返す。
「昨日話していたでしょ。白い花の咲く蔦の話」
「ああ、サムハクシン。あるんじゃないかな。サムハク茶はこの地方の名産だから」
 納得がいった様にうなずいて、でも次の瞬間にはまた聞き返されてしまった。
「で、なんでそんなにこだわっているんだよ」
「何を」
「夢の話」
 それ以上は何も言わず、敢えて黙って私が話すのを待っている。私はうーんと唸ってから、肩をすくめて見せた。
「なんとなく」
「なんとなく? それ、昨日も聞いた」
 あからさまにむっとして、拓也が軽くにらみつける。
 現世では「王子」と密かに呼ばれ、学校のアイドルみたいな存在でいた。整った顔立ちに、にこやかな笑み。それなのに、こちらでは平気でこんな不機嫌な表情になる。
 とはいえ、今そんな顔をさせているのは、私が妙にはぐらかした態度を取っているからだ。さすがにこれは自分の方が感じが悪い。ちょっとだけ反省して、謝るかわりに夢の情景を話すことに決めた。
「……蔦の這う廊下の奥に、行こうとするんだ」
 とりあえず出だしだけ話して、すぐ拓也の反応を横目でうかがう。元々本気で怒っていたわけではないのか、最初から聞く気でいたせいなのか、拓也はにらむのを止めて無言でうなずいてくれていた。それにほっとして、話を続ける。
「廊下の奥に空間があって、そこで何かが私を待っているの」
「何かって?」
「分からない。でも、怖くは無いんだ。その奥にあるものは大切なもので、それが私の事を待ってくれているのが分かるから。だけど、歩いても歩いても辿り着けない」
 言いながら少しずつ、夢の世界に意識が潜り込んでゆく。
 夜のせいなのか、モノトーンの風景。いつまでも歩き続けるのに、決して到達できない奥の空間。懐かしいような、焦がれるような気持ちを抱え、私はただ歩いてゆくだけ。あの先に何があるのか、本当は知っているはずなのに、覚えているはずなのに、なのに思い出せない。思い出せない。
「考えるの、止めたら? 所詮夢の話なんだろ」
「え?」
 拓也の言葉に、急に現実に引き戻された。けれど一瞬何を言われたのか分からず、きょとんとしてしまう。
「俺達、やらなくちゃならないことは色々とあるんだ。夢の世界にこだわって立ち止まるのは、無駄なことだよ」
「……どういう、こと」
 人の話を聞くだけ聞いて、その感想がこれ。そう思うと、一気に血が逆流してくるのが感じられた。手綱を握る力がこもって、つい引き気味になる。マゴクの歩調が落ちたのを感じ、慌てて手綱を緩めた。
「立ち止まっているって、何? 自分の見た夢の情景が実際にここにあるのか、ただ知りたいだけだよ。なんでそんな風に言うの」
「ただ知りたいって、そんな気楽なものには思えないけれど。俺にはずいぶんとその夢にこだわって、立ち止まっているように見える」
「だから、どういう意味よ」
 思い切り不機嫌な顔で言ったのに、拓也は挑発されること無く淡々と言い切った。
「焦っているんじゃないかってこと。夢の続きが思い出せないのも、前世の記憶を取り戻せないのも」
 真っ直ぐにこちらを見る拓也は落ち着いていて、頭に血が上った状態の私とは対照的だった。何でも良いから反論したい。そう思えば思うほど、喉の奥に何かが詰まり、言葉が出ない。悔しくて、にらみつけるばかりだ。
 拓也はしばらくそんな私の視線を受け止めていたけれど、ふいに顔を逸らし、前方を見据えた。
「ほら、急ごうぜ。仕事する前に仲間に追いつかれたら、洒落にならない」
「え。ちょっと、待って」
 慌てる私を軽く流し、拓也は馬の歩を速め、先に行ってしまう。その動きに私もマゴクを駆り立てて、後を追った。
 ここで引き離されたら、私は途端に迷うしかない。その事実に悔しさが余計に増したけれど、どうすることも出来ない。
 拓也の、うわべだけの微笑じゃない、本音しか言わないその態度は、信頼されている感じがして結構好きだったりする。でも、こういう自分の考えを言うだけ言って突き放す態度は、どうかと思うんだよね。非常にムカつく。これが牛車の中だったら、絶対に言い返してやるのに。
 憤っていたけれど、拓也との距離が次第に離れていくのに気が付いた。集中しなければ馬を走らせることなんて、とても出来ない。とりあえず乗馬に専念する。

 けれどそれから一時間弱。
 ようやく建物とそれを囲む塀を見つけ、村の中に入る。マゴクから降りると、きっぱりと拓也に向かって宣言をした。
「ここからは分かれて行動する。一時間後に、ここへ集合!」
 言葉を切って真正面から見つめると、いかにもやれやれといった表情で、拓也は肩をすくめていた。

 村の入り口で別れ、拓也を置いて右に向かう。正面の本通りで別行動を宣言したから、その勢いで自然と脇道に向かうことになる。村の外れ目指して歩きながら、心の中で反論を並べていた。さっきまでは馬を駆ることに必死だったから、ここからがスタートだ。
 確かに、夢の景色が過去の記憶と繋がらないかって期待していた。なかなか続きが思い出せないことに、もどかしい思いをしていた。でもそれを焦っているって言い切るのって、飛躍しすぎだと思うんだよね。第一、無理しないって私は心に決めているんだしさ。ただ単に、知りたいだけ。それにそもそも、私の過去の記憶にこだわっているのは、拓也の方のはずでしょ。思い出せって言ってみたり、思い出さなくても良いって言ったみたり、そしてまた思い出せ。私が過去の記憶にどう向き合うか、私以上に気にしている。そんな彼に焦っているって言われるのは、心外だよ。
 ここまで一気に思いつくと、私は深く息を吐き出した。
 ……でも、なにより悔しかったのは、とっさに言い返せなかった自分に対してだ。なんであの時、言葉が出なかったんだろう。
「あーっ、もうっ!」
 腹立ち紛れに、目の前の石を蹴り上げる。石と共に砂埃が舞い、それを除けるために私は慌てて顔を背けた。その時初めて、この村の景色に目がいった。
 まばらに建っている小屋は、土壁に覆われている。手入れをされなくて久しいのか、所々が崩れていた。道の右側、溝で区切られ奥へと広がっているのは、多分、果樹園。ただでさえ立ち枯れている木々には蔦が絡みつき、足元には雑草が自分勝手に生えている。全体的に埃っぽく、乾いた風景だった。
「水が、足りない」
 思わず言葉にしてから、思い当たる。ここはもう、緑で覆われた草原の世界ではなく、砂漠の世界との境目なんだ。
 そう実感すると、急に一人放り出されたようになって心細くなった。けれど直ぐに今さっきまでの怒りを思い出し、無意味に前方をにらみつける。
「仕事をしよう」
 私に与えられた役目は、この村の調査。この旅に必要なものがあるか、調べなくてはいけないんだ。そして今の私達に必要なのは、水と食料。村の中心部には井戸があると思うのだけれど、それは拓也が探しているはず。それなら私は拓也が見つける事の出来ないものを見つけなくちゃ。
 妙な対抗心でそう決意すると、溝をまたいで果樹園の中に入っていった。相次ぐ大災や人の世話が無くなったことから、多くの木が枯れはてている。けれどそんな中でも辛くも生き延び、不揃いでいびつながらも実をつけている木があった。プラムに似た果物を、背伸びをして一つもぎ取ってみる。試しに食べてみたら甘酸っぱい味が広がって、体中に染み渡った。考えてみたら一月ぶりの果物だ。その美味しさに自然と笑みが浮かぶと、私は本格的に採集するため、さらに奥へと踏み込んでいった。

 果樹園は一定の広さで溝によって区切られていた。最初は良く分からずただまたいでいたのだけれど、そのうちこれが水路になっていることに気が付いた。溝に、水の通った跡があるんだ。奥に入るほど、溝にたまった砂埃が湿っている。そしてその湿り気は、いつのまにか一筋の水の流れに姿を変えていた。
 うまく行けば水と食料、両方を手にするチャンスかも。次第にワクワクしてきて、溝に沿った小道をのぼってゆく。ひとまず果物狩りは止めにして、水源を探してみようかな。
 水路は段になっていて、果樹園の奥の丘から流れていた。徐々に勾配は厳しくなり、やっとの思いで丘の頂上までたどり着く。そこには底の浅い大きな水溜りのような池が広がっていた。
「貯水池かぁ」
 私の直ぐ横には簡素な水門が造られてあって、その扉が開いたままになっていた。管理する人もいなくなったこの池は、少ない雨水が貯まることなくそのまま水路に流れている。人が放棄した土地が、どんどんと自然に飲み込まれている。あと数年もしたら、今辿った貯水池への道も雑草が生い茂り、消えてなくなってしまうのだろう。
 そんな風景を見ているうち、なんだか気が抜けてしまった。確かに水は見つけたけれど、これなら中心部で井戸を見つけて補給した方が遥かに良い。
「どこまで行ってるのかと思ったら」
 草を踏み分ける音がして、拓也の呆れたような声が後ろから聞こえた。油断していた分、びくりとする。
「一時間経ってるぞ」
「え? もう」
 慌てて時計を見ようとして、そもそも自分が時計を持っていないことに気が付いた。
「自分で時間指定したんだから、きちんと守れよ、真子」
 私のリアクションで時計が無いことに気が付いているはずなのに、拓也が敢えて嫌味を続ける。反射的に嫌味返しをしたくなったけれど、さすがに先ほどまでのテンションの高さは失せていた。かといって素直に謝るのもなんだか癪だ。知らん振りして話題を逸らす。
「そっちは何か収穫があったの?」
「井戸なら見つけたよ。ゴクとマゴクにも水はやった」
「あ」
 とっさに拓也を見つめたら、やたらにきれいな微笑を浮かべたまま、低い声でずばりと言われてしまった。
「馬に水やるの、忘れていただろ」
「……ごめんなさい」
 こうなったらもう、反省するしかない。多少の気まずさを抱えながら、うかがうように拓也を眺める。そんな私に肩をすくめてみせると、彼はごく自然に手を差し出した。
「戻ろう。真子に見せたいものがあるんだ」
 そう言う拓也の表情は、もう普段通りのこだわりの無いものだ。けれど、私の方は色んな蓄積された感情が渦巻いている。しつこいかもしれないけれど、反省しているのはこの村に入ってからのことだけで、最初の部分は未解決なんだし。そんな事を考えながら、差し出された手をじっと見つめていた。
「早く」
 急かされるけれど、ここで手を取るわけにはいかない。
「一人で歩けるよ」
 そう言って、先を歩き出す。
 大体、これから足場の悪い段々を下っていくというのに、手を引かれるのって余計に危険だ。レディファーストのつもりなのかもしれないけれど、間違えていると思う。
「ったく」
 そんな声と共に、ふいに後ろから手首を掴まれた。
「歩いていたらまた時間が掛かるだろ。飛ぶよ」
「え? うわっ」
 その瞬間、急に立ちくらみが起こるように力が抜けた。今いる景色が歪んで見えて、次第に別の景色に変わって行く。
 術を使っての移動だ。
 そう気が付いたときには私はへたり込んだまま、ただぼんやりと地面を見つめていた。最近ではずいぶんと慣れたはずの、拓也と一緒だったらという条件付きだけれど、唯一自分でも使える術。けれど油断していた分、ダメージが大きい。
「飛ぶなら先に、そう言ってよ!」
「悪い。でも真子だって聞く耳持たなかっただろ」
「それとこれとは別」
 勢い込めてにらみつけたら、拓也が誘導するように前方を指差した。
「ともかくさ、目の前を見てくれる?」
「目の前?」
 言われて反射的に示された先を見る。その途端、目に飛び込んだのは、濃い緑の細やかな葉っぱ。そしてその中に点々と浮かぶ、小さな白い花々だった。
「これがサムハクシン。開花の時期は過ぎているから、かなり花の数は少ないけれど」
「これ……?」
 気が付けば、辺りに花の香が漂っていた。仄かに甘い、清らかな匂い。
「ここのはあくまでも栽培用に植えられているから、観賞用とは見た目が違うけれど。キョエンに咲いているのは、昨日話したとおり、壁に蔦を這わせていた」
 確かに拓也の説明の通り、サムハクシンの蔦は根元を支えられて立ち上がり、中空にあつらえた棚から葉や花を茂らせていた。背の低い藤棚とか、ブドウの栽培棚にどこか似ている。のどかな風景。まるで一枚の絵のように美しい。
 けれども私は自分の見た夢の世界を重ね合わせ、ゆっくりと首を振った。
「違う」
「え?」
 へたり込んだまま呟く私に、拓也が聞き返す。その戸惑った表情に、私も同じような表情を返して見せた。
「これ、違うの。サムハクシンじゃない。夢の中の蔦は、もっと太くて節くれだっていた。こんなしなやかな蔓みたいなのじゃなくって」
「だってこれ、蔦だよ」
「だから、そうじゃないの。ごつごつしたなんていうか、根っこみたいな……」
 一生懸命説明しながら、一つの言葉が浮かび上がった。
「……ネチカだ」
「はあ?」
「そうだ、ネチカだ!」
 意味の分からない拓也を置いてけぼりにしたまま、私は心の中で呟いていた。
 思い出した。蔦じゃないんだ。根っこなんだ。
 急激に、一つの絵を思い出す。
 小さい頃、パパに連れられて出かけた美術館。その中にあの絵が飾られていた。白と黒だけで造られた作品。切り絵って言うんだって教わった。タイトルは、「ネチカ」。根っこが沢山ある地下道という意味で付けられた。絵を見た瞬間に、幼い頃の私はその世界に惹き付けられたんだ。
「小さい頃、大好きだった絵のことだったの。こっちの世界のことじゃ、なかったんだ」
 なんであの絵のこと、今まで忘れていたんだろう。こっちに来てから見始めた夢だからって、単純に、前世のことなんだって思っていた。思い込んでいた。
「……ごめん。やっぱり私、焦っていた。意味無かったよね」
 拓也を見上げ、それだけを言う。後はもう、何も言えずに黙り込んでしまった。
 あの世界を見ていたのは、前世のアクタではなく、今の私。それにも気が付かないほど躍起になって、拓也の忠告にも腹を立てていた。それなのに、拓也はそんな私にサムハクシンの花を見せようとして、わざわざ探してくれたんだ。……なんか、情けないな、自分。
「その絵って、真子の記憶にあるものなんだろ」
 そんな声と共に、拓也がどかりと私の隣に腰を下ろす。
「でも、ここでの記憶じゃないよ」
 駄目だなって思うのだけれど、どうしても声が小さくなっていった。力が入らない。このままどんどんと落ち込んでいきそうになる。
「あのな」
 ふっと息を吐く気配がして、次の瞬間、拓也の声が直ぐ横で響いた。
「前世のものでなくたって、記憶は記憶だろ。意味無いとか言うなよ」
 その声の強さにつられ、横を見上げる。拓也は私を真っ直ぐ見つめていた。
「記憶は、記憶……?」
 意味を理解しようと繰り返す。
「前世のさ、アクタの頃の記憶で無くたって、真子の中に残っている大切な記憶であることには変わらないって事。だから、前世の記憶じゃないからって、夢の続きを知りたいと思う気持を捨てるなよ」
 視線と同じ、真っ直ぐな話し方。正面から私と向き合ってくれている。だからこそ、少し反論したくなってしまった。
「考えるの、止めろって言ったくせに」
 言った途端、自分の口調がすねていることに気が付く。内心慌てながら拓也の反応をうかがうと、くすりとした笑みでこちらを見ていた。
「夢の世界にこだわるのは、無駄なことなんでしょ」
 一度弾みがついた口は止まらない。反論すればするほど子供っぽくなっていくことには気が付いていたけれども、拓也だったら受け止めてくれる。それが分かっていたから続けてしまった。これは私の甘えだ。
「そればかりを考えて立ち止まるのも、反対に前世のことじゃないからって切り捨てるのも、どちらも無理していることには変わりないだろ」
 そう言って拓也は私の甘えを受け止めると、ゆっくりと視線を前方のサムハクシンへと戻した。
「ネチカの先で真子を待っているものが何なのか、見つかると良いな」
 そしてまた二人、一緒になってサムハクシンをただ見つめる。けれどその風景の先、私の心の中では、ネチカの絵が重なって見えていた。
 私を待つ、大切な何か。遠い夢。遠い記憶。
「見つかると、思う?」
「見つかるよ。大丈夫」
 その声が私の心の中に広がり、染み渡る。
「ありがとう、拓也」
 そう呟いたら、返事の代わりにくしゃくしゃっと頭を撫でられた。
「うわっ、髪の毛乱れるっ」
「ほら、休憩お終い。そろそろみんなも追いつくから、入り口まで戻るよ」
 立ち上がり、砂埃を払うと、拓也は私に向かって手を差し出した。
「行こう」
「うん」
 彼の手を握り締め、立ち上がる。手は直ぐに離されて歩き出したけれど、心はずっと繋がっている感じがした。
 いつか拓也にも、ネチカの絵を見てもらいたい。
 彼の後姿を追いながら、そんな事を思っていた。そして心のどこか、記憶の先で、根っこの這う廊下の奥が誘うように揺らめき続けているのも感じていた。




Special Thanks! [ネチカ] @謎屋