Þáttr af Ekka, Fasold ok Sistram

96章・Þiðrekr leitar nýrra æfintýra.

セトマル王はベルンにおり、シズレクは傷の養生しながら彼のもとにいた。ヒルディブランド、ヴィズガ、ホルンボギ伯、ヘイミルの4名の騎士らも王のもとへいた。シズレクの傷が治ったある日、彼はベルンから一人で馬で出て、ヴィズガ以外は何をしているか誰も知らなかった。彼はその意図を彼に伝えていた。彼は負けで名声を失いたくなかった。彼は以前のように名声を得るまではベルンに戻らないつもりであった。彼は一日中、馬を走らせ、7夜の間で進めるだけ進んだ。彼はオスニングという森に着くまで、人里、無人地、見知らぬ道を駆け抜けた。彼は森のはしでこの晩を過ごした。
 彼はドレカンフリス(Drekanflis)という森の片側に城があると知った。この城は今は亡きドルシアン(Drusian)という王のもので、その妃と9人の娘がそこにいた。妃はエッカ(Ekka)という一人の男と婚約していた。彼が行った全ての国々では彼の右にでる騎士はいなかった。彼の兄弟はファソルド(Faslod)で、どんなに大きなものでも一撃で倒すというほど強く自信家であった。決闘をした時はいつでも一撃以上持ちこたえられるものは誰一人いなかった。エッカは全ての武器を用いて森に狩りをいつもしに行き、もし彼の腕を試したいと思う者と出くわせば、彼はその者を打ち負かすと考えていた。
 シズレクはこの森を切り抜けるすべを知らなかった。できることであれば彼はこの時、彼に出くわしたくなかった。彼はエッカ以外のものとまず腕試しをしたかった。それは彼がまだヴィズガから受けた傷が心配であったからであった。こうして、彼はエッカより腕の劣る者と腕試しをしたかった。

97章・Þiðrekr fann Ekka.

シズレクは真夜中に馬に乗った。彼はエッカが彼に気づかれないように森を抜けて行こうとした。彼が森で道に迷ってどこにいるのか判らなくなった。
 エッカは不意に来て、こんなに堂々と馬を駆けさせるのは誰かと叫んだ。シズレクは自らはスチュダスの息子のヘイミルであると答え、父のいるベルタンガランド(Bertangaland)に急ぎの命により戻っている最中で、エッカには関わり合いのないことだし、関わり合いたくないと答えた。
「貴殿は言う通りヘイミルなんだろう。しかし貴殿の声はセトマル王の息子のシズレクのものに聞こえるが。もし貴殿が行ったように勇敢な者であるのであれば、貴殿は名前を偽りたいとは思わぬのではないのか。」とエッカが言った。
「もはや隠すこともない。貴殿が言ったように我が名はベルンのセトマル王の息子の我がシズレクだ。私は貴殿には用はないので行きたいのだが。」とシズレクが言った。
「もし少し前に一人のデンマーク人に貴殿が負けたと言うのなら、失った栄誉を手にいれることができるゆえ、今ここに貴殿がいるのは幸運だな。貴殿は戦いでよい武器を台無しにした。もし貴殿が私の武器と持ち去り、私を倒せば良くて無駄にならない武器が手にいれることができる。」とエッカが言った。
「貴殿は私に決闘を申し込んでいるようだが、私はこのために家を出たのではない。昼間であれば、私は貴殿の申し出を断らぬだろう。戦いたくないというのではないが、貴殿を少し待たせることになる。わが国のたくさんの者達に知らせるのだ。私はこんな風に貴殿とは戦いたくない。」

98章・Frá viðræðu Þiðreks ok Ekka.

「ここには9人の王の娘がおり、彼女達の母親は私の許婚だ。彼女達はこの戦いのために手はずしてくれた。彼女らはこれらの武器を私に贈った。我が兜は純金(gullroðinn)(赤い黄金)で、鎖帷子は黄金製だ。盾はこれ以上純金(rautt gull)(赤い黄金)でよい石(betri steinar)を使ったものはなかろう。私にはまだ馬がないのだが、貴殿はお乗りだ。そしてこれゆえに貴殿は我らの戦いから簡単に逃げることができる。しかし人を待たせるのは勇敢なことではない。悪いが馬を取りに戻る。もし馬がここにいれば、貴殿の思いにかかわらず私と戦うことになるのだが。」とエッカが言った。
「シズレク、名戦士よ(góðr drengr)、待ってはくれぬか。私は名剣を持っており、このことを語ろう。この剣は貴殿の剣のナグルフリングを作ったドワーフのアールフレク(Álfrekr)の手によるものだ。彼は仕上げ前に大地深くにこれを突き刺した。彼はこれを強固にするための水を探しに9つの国々を探求した。彼はツレヤ(Treya)という河に到着するまでそれを見つけることができなかった。彼はそこでこれを強固にした。柄と握りは赤い黄金製で、柄のあたりはガラスのように磨き上げられている。柄から先までの鞘、革紐には黄金が施され、そこにはいいバックルと帯びの端の飾りがあり、宝石(dýrum steinum)がはめ込まれている。刀身(brandr)はよく磨かれ、黄金で銘が入っている。もし貴殿が大地に切っ先を刺せば、黄金のような光で、龍(ormr)が大地から柄にかけて駆け抜けるように感じるだろう。もし貴殿がこれを握れば、柄から先にかけて龍が駆け抜けるを感じるだろう。この龍は生きているかのように動く。刃は非常に鋭いのでこれに絶え入る鉄はないだろう。この剣はエッキサクス(Ekkisax)という。それはこれには「サクス」でない。(ekki saxの複合語、これはドイツ語の名称の誤認と思われる。第一要素は北欧語ekki「無い」でもエッカの名称にも関係がないのだが、剣の鋭い刃を言及するドイツ語のecke(ドイツ語Ecke「角」や英語edgeの語根)に関係している。)、もしく炎から生まれたかのようだからだ。たとえ世界中を捜そうとも、貴殿はこれと同等のものを見つけるにははるか長い道のりとなるだろう。この剣は盗まれて長い間、隠されていた。大盗賊(inn mikli stelari)のドワーフのアールフレクが作ったものだ。彼はほとんど山に入らないので、彼の父が所有し、父から盗み出し、後にロゼレイヴ王(Rozeleifr)に献上された。そこで大切にされ、若きロゼレイヴが手にして多くのものを殺害した。これは多くの王侯の手を渡り歩いた。もし貴殿が傷を負うことなくこれを持ち去れば、神の幸運が貴殿にあろう。私はこれを死ぬまで離さない。」とエッカが続けた。
「私は貴殿が見れないのに、どうすれば貴殿の手から剣が取れるというのだ。貴殿の声と自慢以外には貴殿のことは何もわからぬ。私は暗い森の中にいるので、貴殿は私を見れぬだろう。私は道を使わず、連れ合いも連れずに旅してきた。もし貴殿は死にたくないのであれば、日が昇るまで私に決闘を挑まぬことだ。互いに相手ができることを認め合いたい。貴殿は我らが別れる前に自慢の代償を払うだろう。」とシズレクが言った。

99章・Þiðrekr tekr áskorun Ekka.

「ごきげんよう。だが私はまず貴殿に私の財布(fégyrðill)について語ろう。中には12ポンドの赤い黄金(tólf pund af rauðu gulli)が入っている。もし貴殿が勝利者になれば、手に入れられる、それに見合うものになろう。この財布の中の黄金のように我が心は輝いている。というのは貴殿を捕らえたり、戦ったりできぬからな。もし貴殿が黄金やよい武器のために私と戦わぬ、そして私の武器を純粋な黄金で象嵌した9人の女王とその母の命と礼儀(líf ok kurteisi)のために戦わぬというのであれば、私は彼女達のために我が勇気を示そう。これゆえここに留まり、私と戦うのだ。」とエッカが言った。
「主はご存知だ。私が黄金や武器のために戦わぬことを。だが9名の女王の礼儀や作法(kurteisi ok hæversku)のためというのであらば、喜んで戦おう。」とシズレクが言った。
そして彼は馬から飛び降りて言った。 「ここは暗くて何も見えない。」
彼は剣のナグルフリングを抜き、前にあった石を攻撃した。すると石から大きな火花が飛び散り、馬をくくる場所を見ることができた。彼はオリーブの木(olivetré)に馬を縛り付けた。シズレクはあまりに激怒したので、それは彼の前でおびえているかのようであった。彼はいくつかの石を激しく蹴り上げたので、足の前にあったものは何でも飛び上がったのであった。
 シズレクは戦うことを快く思い、エッカはこの戦いを喜んでいた。彼は石に剣を打ち付け、そして炎が上がり、互いに姿を確認した。

100章・Þiðrekr drepr Ekka.

彼らは近づき、きわめて激しく勇ましく戦い、そしれこれ以前、これ以後これ以上の勇敢なる戦いはなかったと言われたほどであった。まるでそれ自身が光っているがの如く、彼らの武器から火花が上がり、燃え上がった。それらの攻撃は最大級の稲妻(reiðarþrumur)のように大音響を轟かした。そして相手の防御をなぎ倒したが、どちらも傷を負っていなかった。エッカはシズレクが倒してしまおうと全身全霊で攻撃した。
 エッカは彼の上に倒れこみ、両手をしっかりと掴んで言った。
「もし貴殿が命拾いをしたいのであれば、捕まり、武器と馬と共に降伏するのだ。それから貴殿は私と共に城に行き、縛られ敗北したことをこの戦を私に命じた王女達に示すのだ。」
「私は命を落とすかもしれない。だが、9人の娘とその母の嘲笑を受けるのはまっぴらだし、生きている間ずっと全ての宮廷の娘達や男どもにそんなことをされるのはまっぴらだ。」とシズレクが言った。
それからシズレクはなんとか手を解き、エッカの首のあたりを握り、彼らは全力で取っ組み合いをしたのであった。
 シズレクの名馬のファールカ(Fálka)は主人が助けが必要であると考えた。彼は馬勒を歯で砕き、取っ組み合いをしている場所に飛び出た。馬は両前足を上げて、激しくエッカの背中にどすんと落としたので、彼の背骨は真っ二つに砕けたのであった。シズレクは足を掴んで、エッカの首を打ち付け、頭を落としたのであった。シズレクは武具と武器を取った。そしてこれは今までに見たことが無いような名品であった。

101章・Þiðrekr kemu til borgar Ekka, en snýr frá.

彼は馬に跨り、森を出た。森から出た時、明るかった。シズレクはドレカンフリス城に向かおうとし、エッカを倒したことを知らせ、彼は花嫁と手にいれ、エッカが以前受けていたような栄誉を受けようと考えた。そうして彼は入城した。
 王妃は城の塔に上がり、人の接近をはっきりと見ることができた。彼女は嬉しくなり、戻って娘達に言った。
「いい知らせよ。エッカ卿が昨日出発して、彼は名馬と共に城に戻ってきたわ。彼はある戦士を打ち負かしたに違いないわ。」
 彼女達は金蔵(gersima)に行き、彼に会うために準備をした。しかしシズレクが彼女達に近づくと、彼女達はそれが首領エッカではないと判った。
 老王妃(gamla drottning)は武具には見覚えがあるが、人物にはなかったのでいぶかしんだ。彼女はそれが何を意味するか判り、嘆いた。それから彼女達は戻り、城の者達に伝え、喪につかせ、衣装を着替えさせた。
 城の者達はエッカが殺害されたと判り、それぞれは武器へと駆けより、復讐しようとした。シズレクが圧倒的な兵力が来ていると知ると、彼は馬に戻ってできるだけ早く駆けて逃げ去ることができた。それは城の者達全てが城に戻ったからであった。彼らはエッカの死ゆえに、おびえていたのであった。

102章・Þiðrekr finnr Fasold, bróður Ekka.

シズレクは森に戻り、あてどもなく馬を進めた。彼は見知らぬ町に来て、そこの首領を殺害した。彼はこの国にいる間は全ての者達から敵意を受けたのであった。
 シズレクは森を出て、彼が馬を進めていると一人の男が近づいてきた。その者は体躯は立派で、完全武装していた。彼はエッカの兄弟のファソルドであった。彼らは互いに近づき、ファソルドはその武具を認め、エッカであると思った。
「そこにいるのはエッカか?」と言い放った。
「別人だ。貴殿の兄弟ではない。」とシズレクが答えた。
「聞け。お前は哀れな犬で(inn illi hundr)、殺人者(morðingi)だ。お前は彼の寝込みを襲い殺害しそれを奪ったのだ。もし彼が起きていれば、お前なぞ恐れるに足らぬ。彼は名戦士で、勇敢なものだからお前はたった一人で彼を倒すことなぞできぬ。」とファソルドが答えた。
「お前は間違っている。私は彼の寝込みを襲ったのではない。むしろ彼と戦うように仕向けられ、剣を交えたのだ。彼は私に金銀と9名の娘とその未亡人の母のため、勇敢な者が持ち合わせるような勇敢さのために戦えと言った。それで私は彼と戦わなければならず、決闘したのだ。しかしとの時、もし私が彼があのように強くて立派な体躯を持ち合わせていると知れば、戦う危険は犯さなかっただろう。しかし彼が絶命し、武器を手に入れた。たとえ貴殿が他に考えが及ばなくともこれは避けられぬ事実だ。」とシズレクが答えた。

103章・Þiðrekr vann Fasold ok gerðist fóðir hans.

ファソルドは剣を抜いて、大胆にシズレクに馬を向かわせ、全力で兜に打ち下ろしたので、彼は落馬した。彼は頭がぼうっとして、大打撃のせいで耳鳴りがしていた。ファソルドは彼が一撃で倒した時、剣で誰かを攻撃するとは思われず、彼の武器を彼から奪おうとは思わなかった事を覚えていた。彼は方向を変えて城に戻った。
 シズレクは意識を取り戻し、すぐに立ち上がると馬に跨った。彼は復讐したいと思った。彼はファソルドが逝くのを見て叫んだ。
「もしお前が言うように夕な名戦士であるのであれば、立ち止まり、それ以上遠くには行くな。だがもし、貴殿が止まらぬというのであれば、兄弟の復讐をしよう(hefna)としなかったと皆からの嘲笑(níðingr)を受けよう。」
「ファソルドはこれを聞いて、馬を戻し、これ以上の嘲笑に耐えることなく戦いを望んだ。そして合い間見えた時、互いに馬を降りて戦うために近づいた。この後、彼らは激しく大胆に武器をうまく扱い、互いに大打撃を繰り出し合った。シズレクは3つの傷を負ったが、致命傷ではなかった。しかし、ファソルドは5つの大きな傷を負い、傷と出欠で疲れ始めていた。彼はこれ以上長引くと状況は悪くなる一方とみた。そして最も不本意な形で負けを認めなければならなかった。たとえファソルドが最も勇敢なる者で、名戦士であったとしても、彼は武器を差し出し、シズレクの家来になると申し出た。
「貴殿は名戦士で、礼儀正しき騎士だ。貴殿と休戦するが、家来とはしない。なぜなら私は貴殿の兄弟を殺害し、これが解決するまでは貴殿を信じ難いからだ。だがもし貴殿が私の申し出を受け入れるというのであれば、手を結び、同志の誓いの代わりに栄誉を申し出、必要とあらば互いに力りなり、本当の兄弟のようになり、互いに同等の者であると言おう。」とシズレクが答えた。
 ファソルドはこれを喜んで受け入れて、感謝し、互いに誓い合った。彼らは騎乗すると速やかに立ち去った。

104章・Þiðrekr ok Fasold vinna elefant.

シズレクはベルンに戻る旅路に就き、使命を成就させたと思われ、彼は以前のように有名なものになった。彼らは夜がふけるまで馬で行き、夜を過ごすアルディンサエラ(Aldinsæla)という場所に到着した。朝に彼らは出発し、リムスロー(Rimsló)という森の中を馬で進んだ。そこで最大で獣の中の獣である象(elefans)と呼ばれる類の獣が向かってきた。
「名戦士よ、私がこの獣を追いかけたら貴殿は助けてくれるか?もし我らがこれを倒すことができれば、偉業をなしたといわれるだろう。」とシズレクがファソルドに言った。
「私は戦いで酷く怪我を負い、血も失い、この時、貴殿への支援は申し出るには非力だ。もし貴殿がこの獣に向かっていけば、貴殿は逃げることになると思うので、こんな危険なことはないだろう。」とファソルドが答えた。
「もし貴殿が私を助けることができぬというのであれば、神の導くままにだ。そして私はどっちに転ぶが判らぬことを試してみよう。」とシズレクが答えた。
彼は獣に向かい、近くなった時に馬から下りて、オリーブの木にくくりつけた。それから彼は獣に向かい、攻撃したが剣は食いつかなかった。獣は彼を倒すために前足で蹴り上げた。ファソルドは彼が追い詰められていると思い、彼は助けられることをしようと向かったが、攻撃するにいい場所を見つけることができなかった。
「もし貴殿が両手を自由にして、剣を手にすることができるのであれば、へそに近い胃を攻撃できる。そこは切れるだろう。」とファソルドがシズレクに言った。
 獣は彼が動けないように押し付けていた。シズレクの愛馬のファールカは主人が激しく押し付けられているのを知った。馬は手綱を壊すと、象の尻に向かって両足で攻撃しようと踊り出た。そして象は大地に崩れ落ちた。シズレクは獣の腹部をしたから柄元まで切り上げた。彼は獣の下からすばやく出てきて、両手は真っ赤であった。獣は絶命した。この前にファソルドは獣に大きな一撃を加えたのだが、それは食らいつけなかった。彼は勇敢で、できうる限り手助けしたかったのでこうしたのであった。彼らは馬に乗って去ったのであった。

105章・Þiðrekr ok Fasold bjarga Sistram ór drekagini.

彼らが森を出た時、大きくて驚愕の光景を見た。彼らは巨大な翼竜(mikinn flugdreka)を見た。それは太い足、鋭く長い爪を持ち、頭は長くて恐ろしく、大きくてがっしりとしていた。竜は大地に近づいて飛び、爪が触れた大地は最も鋭い鉄に攻撃されたが如くな状態であった。竜は口に一人の男を咥え、両腕までの両足から上を飲み込んでいた。両手は下あごに置かれ、まだ生きていた。
 その男は2名の騎士を見つけ、叫んだ。
「良き戦士ら、ここにきて助けてくれ。この巨大な妖魔(inn mikli andskoti)は盾(盾の上で寝ていたと思われる)から我が眠りを奪ったのだ。もし起きて体制が整っていたら、こんなことは起こらなかった。」
 シズレクとファソルドがこれを聞いて、馬から飛び降りて、剣を抜いて、両者とも竜に攻撃した。シズレクの剣は多少食らいついたが、ファソルドのものは全く傷つけることができなかった。その竜は大きくて強かったが、武装した人の重みは竜には耐えられず、空に舞うことも身を守ることもできなかった。
「竜の体は硬いので貴殿の剣では切れぬ。竜の口の中にあるこの剣を取るのだ。これは巧みに扱えるのであれば、最良に役に立つだろう。」と竜の口の中の男が言った。
 ファソルドは大胆に踊りでて、竜の口の中に手を伸ばして剣を掴み、すぐに竜を攻撃した。この剣は最も鋭いかみそりの刃のようであった。
「気をつけてくれ。私の足は竜の喉へと深く入り込んでいる。私は自分の剣で切られたくない。最も鋭い剣なんだから気をつけてくれ。」と男がファソルドに言った。
 彼らは両者とも激しく攻撃して、竜は絶命したのであった。

106章・Sistram segir frá ætt sinni.

その男は竜の口から救出され、3名の男達は草原にたたずんでいた。
「邪悪な妖魔(illa fjanda<fjándi)から助けてくれた礼をしたい。一つ要望がある。私は貴殿と仲良くしたい。もし私が選べるなら、我が剣を取り戻したい。ファスフォルドが竜の口から取ったものだ。」
「良き戦士、貴殿は何者で家柄は?どこで生まれて、どこにいくところだ?」とシズレクが男に言った。
「我が名はシストラム(Sistram)、父はレジンバルド(Reginbaldr)と言う。父はフェニディ(Fenidi)の伯だ。そして私はそこで生まれた。私は血族で、シズレクの養父のヒルディブランドに会いに行く所だ。私は11日間夜も休まず馬で進んでいた。私と馬は疲れたので、横になっていたら邪悪な竜が私を見つけて連れ去ったのだ。」と男が答えた。
「歓迎いたす、良き戦士よ(Velkominn, góðr drengr)。貴殿は幸運の持ち主だから剣を受け取り、欲しいものを手に入れるだろう。貴殿はベルンのシズレクを見いだした。我らと共に帰路につき、そこで歓迎されるであろう。」とシズレクが応えた。

107章・Þiðrekr ok félagar hans halda heim.

彼らは森に入り、思ったより早く盾を見つけたのだが、2日かけて馬を探したのだが叶わず、彼らはそれぞれ1人で帰路についた。
シズレクは森を出て、城(borg)を目にした。それはアルディンフリス(Aldinflis)というもので、ロズヴィーグ(Loðvígr)という伯のものであった。そこで彼は鞍と共に馬を見つけた。馬は伯の家来に見つけられて捕らえられた。シズレクは馬を連れていけるように頼み、その所有者が誰か伝えた。しかし伯は馬を連れて行く望みはないと言った。
「もし貴殿が拒もうとも連れ戻す。貴殿は多くのものを失うぞ。そうだな他10名、いやそれ以上だ。もしそうなれば、貴殿も命と王国を失うことになる。」とシズレクが応えた。
 伯はこの男の器量が判った。武装していたので戦士に違いないと考え、見た目も立派であると感じた。
「貴殿との友情のために馬を引き渡そう。貴殿は勇敢なる者に違いない。あえて見知らぬ地に脚を踏み入れるのだからな。」と伯が言った。
彼は大きな黄金の環を手にすると彼に与えた。
「貴殿はベルンのシズレクか?もしくは彼に同等する者か?」と伯が彼に言った。
「包み隠さずに話そう。私はベルンのセトマルの息子のシズレクだ。貴殿のよき心がけと健康に幸あれ。」とシズレクが言った。
 伯は彼に別れの言葉を言い、彼は仲間と会うまで馬で行った。シストラムは馬に駆け寄った。彼らは共に馬で行き、ベルンに到着するまで休まなかった。シズレクとその仲間達は期待通りに暖かく迎えられたのであった。
(03/06/05)


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