Viðga þáttr Velentssonar

80章・Viðræður Velents ok Viðga, sonar hans.

ヴェレントの息子のヴィズガ(Viðga)は12歳になった。彼は大きくて強く、厳格で高貴で、人気があり、うぬぼれることない者であった。ヴェレントは彼に自らが教えることを学びたいかどうかたずねた。彼は世界中を探してもこの父と子の腕前ほどの3人目がでるとは思わないと言った。ヴィズガはそれに対して母方のためにもハンマー(hamarskaft)やトング(tangararm)を手にしたくはないと答えた。ヴェレントはそれでは面目を保って生活の糧として何を学ぶのかを訊ねた。ヴィズガはむしろ名馬、堅い槍、するどい剣、新しい盾、堅い兜、輝く鎖帷子が望みで、これらを使って高貴な首領に仕え、生きている間はその者と共に馬でかけ行きたいと言った。ヴェレントはそれはいいことだが、その後はどうするつもりであるかと訊ねた。ヴィズガはベルンを統べ、セトマル王の息子のシズレクという名前はアムルングランド(Ömlungaland)で聞き知ったといった。彼は世界中で最も名を馳せている人物で、自らと同じ年であると言った。彼はシズレクにお目通りをして、決闘をしたいと言った。もし彼に負けたら、彼は剣と奉公を差し出す代わりに自らに助命するであろうといった。そしてそれが自らにとってよきことになろうと言った。ヴェレントはそれに対してシズレクのもとへ行くのは賢明ではなく、もし決闘をしても、すぐに負けるだろうと言った。シズレクは勇敢で、あるので他のことを薦めたいと言った。
「そこに森があるだろう。その森には一人の巨人がいる。彼は大きくて強いから、多くの者達にとって損害を与えている。お前が彼を見つけることができるようにしてやることができる。もしお前が名を馳せたいと思うのであれば、スウェーデン王がたっぷりと報酬をくださるだろう。王はお前に娘と王国の半分をくれるだろう。というのはその巨人はとっても悪いやつだからな。」
「女のために動きたくない。もし僕が巨人に殺されたら馬鹿みたいじゃないか。僕は言ったようにする。南へ行ってシズレクで腕試しをするんだ。」
ヴェレントは息子の言葉に助言をあきらめたのであった。

81章・Velent bjó son sinn heiman.

ヴェレントは息子に帷子下着(brynhosur)を与え、彼はそれらで武装した。それらは分厚く、良品でしっかりしていた。次に鎖帷子を与え、それを身に着けた。それは鋼鉄のように硬く、全て2重で、彼にぴったりと合うように大きなものであった。そしてヴェレントは剣を手にすると息子に話し掛けた。
「これはミムングという剣だ。大事にうまく使えよ。これは私自身の手によるもので、お前のために与えよう。これでお前の面目が保てることを望む。」
 ヴィズガは最も硬い鋼鉄製で、おおきな針が端から突き出し、分厚くて、丈夫な兜を被った。この兜は「蛇」という竜で装飾されていた。竜は黄金色で、騎士道(riddaraskap)を意匠したものであった。蛇はヴィズガの勇敢さと激しい勇気を示して毒でいっぱいであった。それから彼は盾を手にして、首に吊るした。盾は分厚くて重たかったので、そこらにいるような者は片手で扱えるような代物ではなかったのであった。盾は白色で、ハンマーとトングで飾られていた。それは父が鍛冶屋であるということを示していた。盾の上部は3個の赤い印(カーボンクル)(karbúnkúlussteinar)があった。それは王侯の血筋である母方の家系を示していたのである。この後にヴェレントは1頭の最高名馬を連れてきた。鞍は(söðull)象牙製(fílsbein)であった。そこにはヨーロッパクサリ蛇(naðra)が描かれていた。この後、ヴィズガは母にキスをして別れの挨拶をした。彼女は旅費として黄金3マルクと黄金の環を与えた。彼は父にキスをして別れの挨拶をした。ヴェレントは息子に別れを告げた。息子に触れて、彼らは別れたのであった。この後、ヴィズガは槍を手にして、馬の背に乗ったが、あぶみ(stigreip)にはまだ足を入れていなかった。ヴェレントはそれを見て笑った。彼は全ての道のりをはっきりと教えられるように、大道まで彼について行った。そして彼はたくさんのことを息子に教えた。それから父と子は別れて、ヴェレントは馬で屋敷に戻ったのであった。

82章・Viðga kemr til Eiðisár ok frá Þiðreks mönnum.

ヴィズガは長い距離を、人が住んでいようといまいと、大きな森を馬で駆け抜けた。彼はエイデルという川にたどり着いた。彼は父が言っていたような渡れるような浅瀬を見つけることができなかった。彼は馬を降りて、今を森へ曳いてゆき、木にくくりつけた。それから彼は武具を脱ぎ、誰かが見つけた持ち去らないように注意深くして全て一緒くたに地面に埋めた。この後、彼は川に入り、広い範囲をおぼれないようにして川に沿ってぼこぼこと川を歩いた。 そうしている時に3名の騎士が馬でやってきた。その一人はシズレク王の養父のヒルディブランドで、2人目はヘイミルで、3人目はホルンボギ(Hornbogi)という伯であった。シズレクはヴェンドランドのその伯のを連れてこさせるために彼ら2名の首領を送り出していた。ホルンボギが優秀な戦士で、騎士道やそれ以外の事柄でも彼の右に出るものはいかかったからである。このため、シズレクは彼との友情を持ちたいと望み、彼の全ての家来達も受け入れたいと望んだ。
 ヒルディブランドは彼の従者達に話し掛けた。彼はシズレクが以前捕まえて、名剣ナグルフリング、名兜ヒルディグリーム、それ以外のたくさんの財宝をもたらしたドワーフのアルフレクと思われる者を川で見たと言った。もし彼をどうにか捕まえることができるのであればそうしたいと言った。

83章・Viðga gerist fóstbróðir Hildibrands.

それから彼らは馬を降り、川に向かった。しかしヴィズガは彼らが話していることをはっきりと聞き取っていた。そして彼らに自分を陸に上げてくれたら、彼らと同じ姿であることが認識できるだろうと言った。彼らは彼に上陸するように言った。それから彼は岸に上がった。彼は1かきで9フィートも進んだのであった。ヒルディブランドは彼を見て、彼に身分と出身を尋ねた。ヴィズガは裸の時に尋問するのはよき戦士のすることかと返し、武具を取ってきてもいいかと言った。彼らは承諾し、ヴィズガは武具と衣類のあるところへ向かい、身に着けた。それから彼は馬のところへ行き、馬の背に飛び乗り、彼らのもとへ向かった。
「お三方、優秀なる騎士達に祝福あれ。失礼でなければ各自の名前を教えてはくれませんか。」とヴィズガが言った
「まず貴殿の名前と家柄を願おうか。何をして、なぜたった一人で見知らぬ土地を馬で駆け行くか答えよ。」とヒルディブランドが言った。
「私はデーン人だ。名はヴィズガという。父はヴァレントだ。母はユトランドを統治するニドゥング王の娘である。私はベルン王のセトマルの息子のシズレクにお目にかかろうと旅をしている。私が故郷に戻る前に彼は決闘でいやがおうでも我が名を胸に刻み付けることになろう。」
 ヒルディブランドは彼のように大きく、堂々としている男は今までお目にかかったことがなかった。彼の武具と全ての装備品もまたそんな印象を与えるようなものであった。彼はシズレクが決闘をして、勝利できるかどうかいぶかしんだ。
 そして彼は頭が切れるので、一つの計画を思い立ったのである。それからヴィズガにうれしそうに話し掛けた。彼を賞賛し、シズレクに槍の先を向けるより、同志にならないかと持ちかけた。ヴィズガはそれに対して、貴殿のような優れた武人の友情を断れないと言い、彼の名前を尋ねた。ヒルディブランドは自分の名前はヴェニス伯のブルトラム・レギンバルドソン(Boltram Reginbaldrsson, jarlsins af Fenidi)と言い、そこにいる2人目はシストラム・ヘリンブランドソン(Sistram Herinbrandsson, inn þriði)で、もう一人はヴェンランド伯のホルンボギ(Hornbogi jarl af Vindlandi)とうそを言った。
 この後、ヴィズガとヒルディブランドは握手をして、友情を誓った。それから彼らは馬上のまま川に入り、ヒルディブランドが浅瀬を案内したのであった。

84章・Þeir Viðga koma til hallar ræningja.

彼らは分かれ道まで馬で行った。ヒルディブランドがこの分かれ道はどちらもベルンに続いていると言った。一本は長く悪路で、もう一本は短くて状態もいいと言った。しかし道がいい方には1つ欠点があり、それは石橋での通行しかできない川であった。その石橋はそれゆえブリクタン(Briktan)と呼ばれており、12名の射手が守っていると言った。その一人の名はグラマレイヴ(Gramaleifr)であると言った。そしてその橋はある損失(tollr)が伴い、馬と武具を渡さなければならず、運がよければ五体満足で渡れるであろうといった。シズレクはその城砦を落としにきてそれを成し遂げることができなかったので、この橋を渡りきる望みはほとんどないだろうと言った。彼は12名の戦士と対峙した時、シズレクや他のそれ以外の者達はあえて彼らに挑もうとしなかったので、より長い道のりの方を行こうと彼は提案して言った。しかしヴィズガは短い方の道のりを提案した。そして彼らはヴィズガが提案した方を選んだ。彼らはリラヴァルドという森を抜けた。この森の前にはその城砦が立っていた。
「しばらく待っててくれ。橋に行ってみる。彼らに穏やかに話し掛ければ、彼らは損失なしに我らを通してくれるだろう。もし合意がとりつけられなかったら、戻ってくる。」とヴィズガが言った。
 彼らは彼に行くように言ったのだが、誰も行くことを快くは思っていなかった。

85章・Ræningjar ræðast við um vápn ok klæði Viðga.

ヴィズガは城砦と橋に向かった。最も高い銃眼つき胸壁(vígskörðum)にいた者達は彼の接近に気づいた。
「おい、あそこに大きな盾を持った乗り手がいるぞ。あの盾はきっと俺に似合うだろから、頂戴しようとしようか。お前らは残りのものを分け分けしろ。」とグラマレイヴが言った。
「俺は名剣の方がいいなぁ。もしたくさんの金を取ることができなければあれを頂こう。」とステュドヴス(Studfus)が言った。
「じゃぁ俺は鎖帷子だ。」とスラレッラ(Þrælla)が言った。
「じゃぁ俺は兜だ。」とシグスファヴ(Sigstafr)が言った。
「奴は名馬に乗っている。あれをもらおう。」と5人目が言った。
「キルトと全ての衣類をもらおうか。」と6人目が言った。
「他に取れるものがないってんなら、鎖帷子下着をもらおうか。」と7人目が言った。
「財布吊りとその中身をもらおうか。」と8人目が。
「右手をもらおうとするか。」と9人目が。
「右足をもらおうとするか。」と10人目が。
「頭をもらおうとするか。」と11人目が言った。
「あの男は殺すな。たとえ取るものがたいしたことがなくともな。」とスチュドヴァスが言った。
「おい誰か3人でやつの武器と身包みを剥いでこい。左手と左足と命だけはおいておいてやれ。」と首領のグラマレイヴが言った。

86章・Viðga berst við ræningjana.

3人の男が彼に近づいた。ヴィズガは彼らに友好的に挨拶をした。彼らはそれに対して友好的な挨拶は返さないと言い、武器と衣類と馬と右手と右足を奪うといった。そしてお前は命だけは助けかるので自分達に感謝するのだと言った。ヴィズガはそれでは不公平な申し出だと言い、自分は無実の外国人であると言った。そして彼らの首領に会わせて欲しいと言った。
 彼らはグラマレイヴの元に言って、それを伝えた。グラマレイヴはこれを聞いて、すぐに立ち上がった。彼と仲間の12名は皆武装して、橋を馬で渡った。
 ヴィズガは彼らに友好的に挨拶をした。
「お前は歓迎なんてされないよ。お前は持ち物だけじゃなく、片方の足と片方の腕もなくなるんだぞ。俺はお前の盾を取る。残りは他の者達が手にいれるというわけだ。」とグラマレイヴが応えた。
「盾がなくなったらそれは大変だ。でもデンマークの故郷に戻れば、父のヴェレントはシズレクが力ずくで僕の盾をぶん取ったって言うだろう。でも僕は彼と会っていない。だから盾を手放すわけにはいかないんだ。」とヴィズガが応えた。
「さっさと剣を渡せ。もし何もそれ以外にいい物を渡せないっていうんならな。」とスチュドヴァスがヴィズガに言った。
「でも貴殿は剣がいいかわるいかわかっていない。私は決闘をしたいとは思わない。もし剣をぶん取るってのなら父のヴァレントはシズレクが力ずくで奪ったというだろう。だって私は他の誰にも渡さないから。」とヴィズガが言った。
 それからその他の各自がそれぞれのぶん取る予定のものについてヴィズガに語りかけたのだが、彼は同じように渡す気はないと答えた。そしてスチュドヴァスは12人もの敵を相手にする気かといい、彼に剣を抜くように言った。
 それからスチュドヴァスは剣をすばやく抜くと、ヴィズガの兜に攻撃した。しかし兜は硬くて、最も硬い石よりも硬かったのでなにも傷がつかなかった。ヴィズガはミムング剣を抜くと、スチュドヴァスに攻撃し、その最初の一撃は左肩までずぶりと突き刺さり、肩を切り裂き、縦に真っ二つにしたのであった。両側はそれぞれの方向で大地にどすんと崩れ落ちたのであった。
 グラマレイヴの者達の間に動揺が走り、多くのものはかかってきた。彼らは皆、剣を抜いてヴィズガに打ちかかろうとした。グラマレイヴは兜を攻撃したのだが、傷一つつけれなかった。ヴィズガはグラマレイヴを攻撃し、ベルトまで頭と体を引き裂いた。そしてその骸はどすんと大地に崩れ落ちたのであった。

87章・Þeir Hildibrandr koma til fundarins.

ヒルディブランドが仲間達に話し掛けた。
「やつら雁首そろえて来たようだな。馬に乗ってどうなったか見に行こう。もしヴィズガがやつらを倒して我らが手助けしかったら、裏切ったといわれるだろうからな。もし彼が我らを見つけて友情の誓いを裏切ったとなれば、我らの死につながる。」
「もし彼が勝てる見込みがあるんなら馬で行こう。だが彼が倒れるとなると、できるだけ早く馬で逃げ去ろう。見知らぬ男のために命をかける必要もないだろう。それが一番手っ取り早いし、恥にもならんだろう。」とヘイミルが言った。
「それは大切な彼にとってはひどい仕打ちだな。」とヒルディブランドが言った。
「我らは彼と誓い合ったじゃないか。助けるのが男というもんだろう。」とホルンボギ伯が言った。
「それがいいし、男のすることだ。」とヒルディブランドが言った。
そして彼ら馬で橋に駆けていった。ヴィズガはその間、大立ち周りをして12名の敵は残すとこ5名以上はいなかった。シグスファヴと他4名は逃げ去った。その時、ヴィズガは仲間と出会い、彼らは互いに喜んで迎え入れたのであった。

88章・Viðga brennir kastalann.

彼らは馬で入城し、ワイン(vín)や食料や望むだけの金銀財宝を手にいれた。その晩、彼らは眠りについた。ヒルディブランドはヴィズガについてあれやこれやと考え、確かに彼は戦友で養い子のシズレク卿に見合うように思えた。彼はまたヴィズガの所有する武器についてもあれやこれやと考えをめぐらした。真夜中、ヒルディブランドは起き上がり、鞘から自らの剣を抜いた。そして彼はヴィズガのミムング剣を鞘から取り出し、握りと柄を自らのものと取り替えると自らの刀身と摩り替え、彼の横にそれを横たえた。彼は再び横になり、出発の準備が整う昼まで寝ていた。
 出発前にヴィズガはヒルディブランドに落とした城の扱いについて訊ねた。
「いいと思うことをすればいい。もはや偽る必要のないので、貴殿に私の本当の名を教えよう。我が名はヒルディブランド、ベルンのシズレクの家臣であり、ここにいる仲間全てもそうである。たとえ今まで名前を偽っていたとしても、貴殿への誓いは本物である。どうだこの城をこのままにして、我ら2人の友情をここにとどめ、ここを見張り、そして私は貴殿についてベルンまでシズレクに謁見しに行こうではないか。このままにしておくとシズレクは貴殿にこの城と報酬をお与えになるだろう。しかしこの話に乗らないとなると、大量の金品と共に貴殿を元のように一人きりにここに置いていくことになる。」とヒルディブランドが答えた。
「外国人、自国民を問わずこの橋には災難が住まう。この道は多くの者にとって有益なものだが、悪者が住んで、強固な城砦があったがばかりに長い間、この道をあえて通るものはいなかった。もし私が決めれるというのであれば、貧しき者、富める者、年齢に関係なく、皆が自由にこの橋を行き交うのがいいだろう。」とヴィズガが言った。
「ここに留まるも立ち去るも、この城を剣で落とした者が決めるのが筋ってもんだな。」とホルンボギ伯が言った。
 それから彼らは金目の物を手にすると、ヴィズガは城の基礎に火を置いた。彼らは完全に燃え落ちるまで立ち去らなかった。

89章・Þeir Viðga fóru yfir Visará.

彼らは上機嫌で順風満帆で馬を走らせて行った。彼らはヴィサラ(ヴェゼル川)(Visar&aaucte;)という川にたどりついた。そこには2つの岩角にかかっている橋があった。シグスタヴとその仲間らがすでにここにきて橋を破壊しており、追手のヴィズガやそれ以外の者達を避けるために渡れないようにしていた。彼らは武器を持って出ることができず、びくびくしながら逃げおおせようとしていた。
 ヴィズガは橋が落ちているのを目の当たりにした。彼は馬に掛け声をかけてスケッミングを勇敢にも橋に向かって突撃させた。馬は橋脚があった丘から飛び出し、弓の一撃の如くもう片側の絶壁にまで飛び越えた。その時ついた足跡は今でも見れるという話である。ヒルディブランド、ヘイミル、ホルンボギは彼の後を馬で追った。ヒルディブランドの馬は丘を飛び越えて、川に落ち、対岸まで泳ぎきった。ホルンボギ伯も渡ろうとして、ヒルディブランドより陸に近いところまで飛びこえた。ヘイミルはスケッミングの兄弟のリスパを駆けさせていた。リスパはスケッミングがしたように2つの岩の間を飛びきったのであった。
 ヴィズガが川を越えてすぐに、彼はシグスタヴとその仲間らが立っているのを見て、それに向かって馬を走らせた。彼は敵の間に突っ込み、激しく戦った。ヴィズガは何度も攻撃して彼らを倒したのだが、ヘイミルは馬の背にまたがって助けようとはしなかった。ホルンボギ伯が上陸したとき、彼はヴィズガを助けるために勇敢に馬を走らせた。この結末はというと、5人の盗賊全てが命を落とし、ヴィズガがミムングがすり返られているということに気が付かなかったということで落ち着いたのであった。

90章・Viðga býðr Þiðreki konungi einvígi.

その日の夕暮れにヘル(Her)という場所に彼らは到着した。この農場はシズレクの父のセトマル王に属し、ヒルディブランドの妻が切り盛りをしていた。彼らは一晩ここで止まり、次の日にここからそう遠くないベルンに行った。シズレクはヒルディブランドの期間とホルンボギ伯とヘイミルが彼に従って来たということを食卓で座って報告を受けた。それから彼は立ち上がり、彼らに会いに向かった。彼は皆を歓迎し、色々な情報を訊ねた。彼はヴィズガとは全く話さなかった。それは彼について何も判らなかったからであった。
 ヴィズガは銀で装飾された手袋(glófa)を脱ぐと、シズレクの手に置いた。シズレクはこの意味を尋ねた。
「これで貴殿に決闘(einvígi)を申し込みます。貴殿は私と同じ歳で、私は貴殿のことをよく話に聞いていた。私は家を出てから多くの苦難を耐えてきたので、貴殿に対等であろうと思うし、全ての地で言われているように貴殿が最高の戦士かどうか知りたい。もし断らないというのであれば、私の使命を成就させたい。私は家を出た最初の日からこの覚悟でした。切に貴殿との決闘を望みます。」とヴィズガが答えた。
「父王と自らの国では平和にするようにと決められている。だから腰抜け(greybaka。=grey雌犬、臆病者)はあえて私に決闘を申し込んではこない。」とシズレクが答えた。
「お止めください我が主よ。閣下はこの者がどのような者かおわかりではない。私には結末がとのようになるか確かには申せません。しかしもし閣下が一人でなされるのであれば、おそらく負けると思われます。」とヒルディブランドが言った。
「それは大変な恥だな。もし全ての奴隷が閣下の国で閣下に決闘を申し込むとなれば。」とシズレクの家来の一人のレイナルドが言った。
ヒルディブランドはこれを聞いて口を開いた。
「私の旅の同志を侮辱するな。」
そして彼はぎろりと睨みつけたのですぐに静かになった。
「なぜお前はこの者に入れ込むのだ。そのわけを述べよ。さもなくば今日ベルンの前でこの者を吊り下げるぞ。」とシズレクがヒルディブランドに言った。
「彼が閣下らの支配化に入るかどうかは、たとえそれが厳しくとも閣下ら2人が勇敢さと勇気を試して、彼が閣下らの判断に満足した時である。彼はまだ自由の身で、もし閣下ら2人が戦えば、一日がかりになり、閣下は彼を試せるでしょう。」とヒルディブランドが答えた。

91章・Þiðrekr ok Viðga búast til einvígis.

シズレクはすぐに武器を運ばせた。彼は鎖帷子下着を着込んだ。その後、彼は鎖帷子を身に付け、それから兜のヒルディグリームを頭に被った。彼は剣のナグルフリングを手にして、黄金の獅子が描かれている盾を取った。それから彼は槍を手にした。彼の馬の準備が整った。その馬はフルカといい、スケッミングの兄弟であ、以前はヴィズガのものであり、ヘイミルのものであるリスパの兄弟であった。シズレクは馬の背に飛び乗り、ベルンの外まで駆けていった。首領と騎士らの群集が彼の後についてきた。シズレクはベルンの外へ出て、そこにはヒルディブランドとわずかな者達の背後にヴィズガがいた。ヴィズガは完全武装で馬にまたがり、彼は大きくて堂々としていた。
 ヘイミルは手にワインを満たしたボウル(skál)をもってシズレクのところへ行った。
「どうぞ閣下。神が今日といつも勝利をもたらすように。」といった。
シズレクは受け取ると飲み、それから返した。ヒルディブランドは違う杯をヴィズガに差し出した。
「それはシズレク卿に差し上げる。そして彼に私の前に飲むように言ってくれませんか。」とヴィズガが言った。
 ヒルディブランドはシズレクにその杯を渡したが、彼は怒って受け取らなかった。
「閣下は立腹させられたあの者のことを明確にはご存知ない。閣下が今日、話されたような戦士ではありませし、腰抜けでもありません。とヒルディブランドは言った。
彼は再び戻ってヴィズガに杯を差し出して言った。
「飲みそして勇気と勇敢で守りくだされ。神は貴殿に手助けしよう。」
 ヴィズガは杯を受け取り、飲んだ。それから彼はヒルディブランドをつかむと、黄金の環を渡して言った。
「貴殿の支援への神の感謝を取りたまえ。そして健康であれ。」

92章・Viðga ok Þiðrekr berjast á hestum.

ヴィズガはシズレクに声をかけ、準備が整っているか訊ね、シズレクは準備万端であると答えた。両者とも馬をせきたて、ランスを向けた。シズレクは赤い獅子(león rautt)と黄金の縁のある旗を手にした。ヴィズガは白で描かれたハンマーとトングのある赤い旗を手にした。
 それから互いに餌を追いかける飢えた鷹のように早く馬を駆けさせた。そして彼らが出会い座間に超人的な力で槍を互いに突き刺した。シズレクの槍はヴィズガの盾に刺さったのだが、彼はとの時、盾を持っていた。ヴィズガの槍はシズレクを刺して、三片に壊れた。馬は相手方から離れた。
「馬をこちらに向けて、再び勇敢に馬をけしかけろ。貴殿はまだ槍をお持ちだが、私は失っている。私はまだ逃げ出していないので第2打を行おう。貴殿が私のように槍を失うか、私が馬の背から大地に落ちるかのどちらかのなろう。」とヴィズガが言った。
 ヴィズガは剣を抜いた。シズレクは馬の向きを変えて、大胆に駆けさせて、ヴィズガに向かった。シズレクはヴィズガの喉を狙ってしとめようとした。しかしヴィズガは剣で槍の穂を切り、同じ一撃で自身の盾のとがった先を切った。硬い鎖帷子が守ったので、彼はまだ傷ついていなかった。彼らは再び離れ、馬は駆け抜けた。

93章・Frá einvígi ok meðalgöngu Hildibrands.

彼らは馬から飛び降り、剣で戦った。ヴィズガはたくさん攻撃し、またたくさん受けた。ヴィズガはシズレクが気づくと思った一撃をタイミングをずらした。彼はシズレクの兜に攻撃したのだが、兜が硬くて傷一つつけられなかった。そして剣が真っ二つに折れたのであった。
「こんな粗悪な剣を作った汝、ヴェレントに天罰を。私は傷と恥の両方を受けた。」とヴィズガが言った。
シズレクは両手で剣のナグルフリングを振り上げてヴィズガの頭に攻撃した。
 ヒルディブランドは彼らの間に踊り出て言った。
「この者を許し閣下の臣下に取り入れてください。閣下はこれまで家臣としてこれほど勇敢な勇者を取ったことがございません。閣下の家来全てを持ってしても落とせなかった城砦を彼は一人で12名の敵からブリクタン城砦を落としたのです。
「決着がつく前に教えてやろう。この者はベルンの前で今日、吊るされるのだ。」とシズレクが答えた。
「このようなよき者にそんなことはしてはいけません。彼は父方も母方も最高の王族なのです。彼は閣下の臣下に下りたいを望んでおります。彼を受け入れてくれませんか。」とヒルディブランドが言った。
「今ここで、父の国全てのこの法を布告しよう。奴隷の息子は私に戦いを挑んではならぬと。私はそんなやつに我慢する気もないので、ベルンの前で忌まわしい犬(illi hundr)を吊り下げることで彼を免除する。行け、貴殿の奉仕は彼も貴殿も手助けしてはならぬ。もしできぬというのであれば、貴殿を真っ二つにする。」

94章・Viðga fekk sverðit Mímung ok vann sigr.

ヒルディブランドがシズレクが彼の要求を認めておらず、助命しようとしていないと知ると彼は言った。
「貴殿は何も手助けを受けられないだろうから、その子は欲しいものを手にいれるだろう。」
 ヒルディブランドは鞘から剣を抜いて言った。
「主は真実を語ることを支持されよう。さあ私と友情を結んだよき戦士よこれを見よ。貴殿の剣のミムングを手にとり、貴殿の勇敢さを守りたまえ。」
 ヴィズガは夜明けの鳥のように幸せになり、彼は剣の黄金の細工にキスをして、父のヴァレントを悪く言ったことを神に許しを乞い、シズレクにミムングを見るように言った。そして飢えた者のようなシズレクと戦いたいと言った。
 彼はシズレクを何度も攻撃し、その一打一打は鎖帷子や盾や兜を切り裂き、シズレクは反撃できなかった。彼は守る以外に何もできなかった。彼は手一杯で、5箇所に傷を受けた。シズレクは戦いの結果がどうなるかを見越した。彼が助命を受け入れなければ、倒されてしまうと思った。
 彼は師匠のヒルディブランドに一人では無理なので、手助けするように言った。
「私は動きません。閣下は私の助言を受け入れなかったでなはいのですか。閣下はこの戦いで名声を栄誉を手にいれ、全ての国々で知られることになるでしょう。ヴィズガはいい戦士で勇敢な者と伝えた時にそうしていればですが。閣下の帷子は裂け、盾は壊れ、傷を負っている。閣下はこの最後を不面目で終わらせることになるでしょう。閣下は傲慢、自尊心、冷酷を選んだのです。もしできるのであれば、終わらせてください。ヴィズガを裁くのか、認めるのかのどちらかで。」とヒルディブランドは答えた。

95章・Viðga gaf Þðreki líf ok sættir þeira.

だがセトマル王は息子が打ち負かされようとしているのを見て、彼は赤い盾(skjöld rauðan)を取り、間に割って入った。ヴィズガは何をするつもりかと訊ねた。そして自らを国外追放するのか、処刑させるつもりなのか、自分を誰の口からもよき戦士であったと言わせないようにしようとしているのかと訊ねたそしてこれが復讐を生みだすぞと言った。そして自分にはより力強い王であるおじがいると伝えた。
「よき戦士を悪いようにはせん。どうか私の息子と離れてくれないか。これ以上戦いが長引けば息子の命がない。どうだ私の国の城一つ貴殿に差し上げよう。そしてそこの伯になれ、希望とあればよい結婚相手も与えよう。」と王が言った。
「陛下の申し出は望みません。陛下が私をたくさんの圧倒的な兵力でねじ伏せない限り、彼は私に言った同じ事を受けるのです。」とヴィズガが答えた。
王は立ち去り、彼らは再びあらん限りの力を出して戦った。シズレクは上手く勇敢に防御したのだが、ヴィズガは極めて激しく攻撃した。ヴィズガはシズレクの兜のヒルディグリームの左側を攻撃したので、右側にへと酒、ばらばらになって飛び散り、髪の毛もいくつかそうなったのであった。
 ヒルディブランドはヒルディグリームが壊れたのを見て、彼らの間に割って入った。
「ヴィズガ、親友よ。友情に免じてシズレクと休戦してくれ。そして彼を同志とするのだ。もし貴殿らが世界中を共に行くので有れば、誰も貴殿らが同じだとは言わぬだろう。」
「彼が私にしたことが何であれ、貴殿との友情に応えてそれを受け入れよう。」とヴィズガが応えた。
 彼らは武器を放棄して、握手をした。彼らはよき同志となり、友人としてベルンに戻り入っていったのであった。
(03/05/21)


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